「社会的フツウ意識」に
一時的にフタをするだけ?

 スワッピング(以下スワップ)というプレイ法があると知ったのは、まだ処女の頃である。外国小説にそのことが触れてあった。
(夫婦同士が相手を交換してセックスする? は? なんでなんで??)
 ビフテキってどんな味なんだろういつか食べてみたいとか、可愛い夢を見ていたくらいだから、外国人ってやっぱりスゴイと唸ってそのまま忘れていた。
二十年後に自分がやるとは思わなかったけれど、やってみたら、なぜこういうプレイ法が編みだされたのかは、あっさり理解できた。
 スワップは自虐プレイの一種だった。「ああっ! わが妻がヤられている、ク、ク、ク……」と胸をかきむしるのが真髄の寝取られプレイである。
 世の中にはさまざまなフェチ、性癖があるようだけれど、
(えっ。犬のタマのにおいを嗅ぐと勃起する? なんでなんで??)
 といったふうなニッチな嗜好に比べたら、スワップは理解の範疇にあってノーマルだ。マンネリ打破、刺激欲しさで「社会的フツウ意識」に一時的にフタをするだけで、変態性もリスクもそんなにない気がする。

 よく聞くのは「身元不確かな輩と性行為をするなんてビョーキ感染がコワい」という声だが、スワップの場合、元夫婦間で性行為がなされているのが前提だ。目の前でフル行為を披露されたりもするし、「じゃ、夫も妻もビョーキはないってことだね」という安全保障は一応あることになっている。とっても詭弁っぽいが。


夫婦双方公認の浮気であり
結託してのツマミ食いである

 それで、女たちにしてみれば、将来的に破る破らないは別として「生涯夫の男根以外挿入しません」と誓約するのが妻になるということだから、夫からスワップを持ちかけられたりすると、軽いパニックは起こすと思う。最も一般的なのが、「私以外の女とヤリたくて私をほかのオトコにあてがおうっての、キーッ!」という反応だ。
 とくにセックスレス夫婦の場合は、いくら「もういちど、妻に恋する」というステキなコピーが胸にこだましているからといって、さんざん放置しておいて(コワくて近寄れなかったとしても)いきなりでは女心を傷つける。
もちろん、見たこともない淫らな痴態で見知らぬオトコに抱かれている妻……背徳の一線を越えて初めて思い知らされた、わが妻の魔性……。
――お、奥さん、すっすごいな……
――はああっ。んふぅっだめぇぇ
――ああ、オレ、もう、もう
――やだやだやだもっとぉ! だってオイシイの。オイシイのぉォォ
 こ、こいつ……オレの前で見せていた平凡な妻の顔は、仮面だったのか!?
といった自虐の刺激は今後の夫婦円満におおいに役立つとは思う。それに言葉は悪いが、ようするに夫婦双方公認の浮気であり、結託してのツマミ食いセックスであるから、妻にとっても実はなんのデメリットもないのだ。

 そんな優良プレイを実践できるかどうかは、日頃の妻への女扱いや会話の質がものをいうので、トライしてみたくなった方は、半年ほど忍の一字で、「今日もステキだよ、オレのハニー」と毎朝髪をなでたりしてみてはいかがだろうか。

後ろめたさもトキメキもなく
面目ないほどケロッと前向き

 さて、個人的にはスワップから遠のいて久しいので、今はどんなふうに夫婦が出逢ってプレイしているのかわからないが、十年前当時はこんなふうだった。

●スワップ相手募集用のサイトがいくつもあるので、そこに相手募集の投稿をしておく。

●届いた応募メールの中から対戦夫婦をチョイスし、メール数回で段取りをつける。

●場所と日時が決まったら当日対面し、そのままプレイ突入する。

 ふりかえると、われながら面目ないほど味気ないが、フツウ女は迷い、ためらい、恥じらい、理性が吹っ飛び、となってしかるべしだ。私の場合はオトコに従順すぎたがために、「コレは良き行為である」と信じ込んで、羞恥も後ろめたさもトキメキもなく、ケロッと前向きだった。
(彼のヨロコビのために……よぉし、もっとがんばる!)
 みたいに朝ドラヒロイン的な感じである。
 そのため、肝心の自虐的刺激を味わった記憶がない。女は女でスワップすれば嫉妬でカーッと燃えるらしく、夫君を乗せている最中に、妻に髪をひっつかまれたり(横で妻に乗っている相方が気を抜くとこういうことになる)、顔面を踏みつけられたり、事後号泣されたりしたことは多々ある。まあ、マンネリ夫婦であったなら、夫婦愛再燃のお役には立てただろうと、静かに見送るのだが。
 そんな中で、唯一「あの時だけは妬けた……」と言える、印象深いスワップの思い出を語ろう。