◆学習者の落ちこぼれを予防するシステム

 では、実際に教育現場ではAIが導入されているのかというと、実はまだ日本では取り入れているところが少ない。それは、◯◯のデータがあれば××の分析が出来ると考えてデータを集めているところが少なく、またデータがあってもそれを分析できる人が不足していることに尽きる。
 しかし、導入に向けての動きは見られる。リクルートでは2011年から「スタディサプリ」(旧「受験サプリ」)というオンライン上における教育事業を開始し、2014年からAI研究で著名な東京大学の松尾豊准教授との共同研究を開始している。「到達度テスト」を用いて個々の苦手分野を単元別に把握し、それに基づいた学習内容を薦めることで好評頂いている。
 他にも、ディープラーニング(深層学習)を採用し、学習者の動画視聴・問題回答などの学習ログに加え、「スタディサプリ」に蓄積された大量の学習ログを用いて解析を行いて、学習者の「解けない」問題予測を実施している。

 調査では、小5算数で「解けない問題」全体の30.4%の問題を90%の精度で予測。小6では「解けない問題」全体の27.1%の問題を88%の精度で予測。調査を元に小中高約20校を対象に、先生を介して生徒へ苦手克服レコメンドを配布、効率的な学習(学び直し)を提案し、実証研究前後でレコメンド実施者の成績の大幅改善が見られた。このことは、学習プロセス・時間の効率化だけではなく、学習者のモチベーションの維持や効率的な学び直しの実現に大きく寄与すると考えている。
 何より、「もう分からないから、やーめた!」とドロップアウトする人を予防することが可能となる。特に、算数や英語など積み上げ型の学習が必要な教科に効果があると考えている。他にも、AIの可能性としてテストの時間を短縮出来たり、記述式の回答を添削したりということが将来的には可能になってくるのではないか。

 また、AIをはじめとしたテクノロジーは子どもだけではなく、先生の事務作業の負担軽減も出来るかもしれない。
 先生の多忙については、OECDの2014年の調査でも、日本の教員は1週間約54時間勤務で、参加した34カ国平均の約38時間を大幅に上回ることが指摘されている。2016年の5月に発表された東京学芸大学等による教員対象の調査もそれを裏付ける結果となっている。それによると、「授業の準備時間が足りない」と考えている公立の小中高の教員が約8割〜9割で、具体的には小95%、中84%、高78%と高い数字になっている。日本の先生は、授業以外にも部活や校務と呼ばれる事務作業も抱えている。その事務作業をテクノロジーが担うことが出来れば、先生たちの負担軽減に繋がり、子どもたちのケアにより時間を割けるようになる。

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