ドゥテルテは本当に「暴言大統領」なのか? 知られざるフィリピン苦悩の500年から、大国アメリカにモノ言う大統領誕生まで。激動の東アジア情勢を左右する国の、歴史と展望をダイナミックに描いた『アメリカに喧嘩を売る国』の著者・古谷経衡氏が断言。21世紀はフィリピンの時代になる――。

韓国は「普通」すぎて楽しくない。対してフィリピンは……

 アジアでフィリピンほど面白い国はないのではないか。正直言って韓国は「普通」すぎて楽しくないのである。

 「嫌韓」を商売にしている人は韓国のことをしきりに「異常な国」とか「法治国家ではない」というが、韓国に行けばかの国がいかに平凡かがわかる。物価は日本と変わらず、鉄道やバスは定時に運行され、官憲は法に則って機能しているし、基本的に人々は親切である。ソウルやプサンの地下鉄では日本語のアナウンスが流れ、日本語で看板の説明書きがある。

写真:アフロ

 当然公然と「親日」を言うのに憚られる空気があるのは事実であろうが、ソウルを歩いていると必ずと言ってよいほど韓国人が拙い日本語で話しかけてくる。表向きは歴史問題や竹島の件で「嫌日」を謳う韓国人は、裏返すと日本人に対して強烈な憧憬を持っている。

 しかし逆に言うと、日本と同じすぎて韓国は異国としての魅力は余りない。だったらより温暖な台湾に行こう、という流れが起こるのは当然である。

 それに比して、韓・台と同様、日本の隣国であるはずのフィリピンには、なぜか日本人の出足は鈍い。せいぜい、同国中部セブにリゾートをするくらいである。フィリピンは日本に最も近いカトリック教国である。

 クリスマスシーズンにフィリピンに行って驚いた。

 偶像崇拝を禁忌とする傾向の薄いカトリックのクリスマスには、イエスやマリアや使徒に関する偶像であふれかえっている。各地にある教会は荘厳な祈りと、カラフルな電光の混合となる。本場カトリックのクリスマスは、せいぜいラブホが一杯になったり、コンビのの店員がサンタクロースの格好をして鶏肉を売るのが関の山の、日本式のクリスマスとはわけが違っている。本場のカトリック教国のこのような情景は、当然プロテスタントが優勢な韓国には無い光景である。

 フィリピンは韓(5000万人)・台(2300万人)を足しても足りない総人口1億人を抱える大人口国だ。遠くない将来、フィリピンの人口は日本を追い抜くであろう。マルコス時代に停滞していた経済は、90年代からゆっくりと持ち直し、現在は年平均6~7%の高成長を誇るアジア経済の牽引役である。かつて「アジアの病人」と呼ばれるほど停滞した経済は、ここ数年明らかに盛り返している。あまりにも成長余地の大きいフィリピンは、日本との距離的な近さの関係もあって今後、より輝ける存在になるであろうことは疑いようもない。

 韓国や台湾が「大国」になる未来は考えづらいが、フィリピンが将来「大国」になる素地は整っている。大人口、日本とほぼ同じ程度の国土面積と広大な経済水域、そしてニッケルや銅に代表される豊富な地下資源の存在、そしておおらかで闘争を好まない平和的な国民性等である。ネックになるのは脆弱な軍事力(特に海軍)が故の、中国との衝突局面における頼りなさ(国防予算約3700億円で日本の14分の1程度)であるが、この分野にこそ日本の協力が不可欠であろう。

 NIESとかBRICSとかNEXT11とか、様々な「次なる成長国」を示す造語が出ては消えた。BRICSの先頭たるブラジルは意外なことに早晩没落してしまった。中国は確かに大国になったが、それは私たちが「21世紀はアジアの時代」と夢想した1990年代の理想像とは異なっている。経済が発展すれば中国にも「自由と民主主義」が徐々に根付いていくはずだ、と思っていたはずだが結果はどうであろうか。中国のインターネットはいまだに世界へ解放されておらず、共産党体制が民主化したとは到底言い難い。

次のページ 真の意味で「自由と民主主義」根付く国