「なぜ彼女たちは裸になったのか」など、性を売る側の女性にばかりが注目されがちな売買春の現場だが、もう一方の当事者である男性側に目を向けることによって、見えてくるものはあるのか!?「見えない買春の現場 『JKビジネス』のリアル」を2月9日に刊行。「性の公共」をつくるという理念の下に、現代の性問題の解決に取り組んでいる坂爪真吾氏に語っていただいた。
 

■広がりをみせる買い手側への規制強化

 2016年の参院選において、民進党は政策集の中で「売買春等における買い手を生まないための教育・啓発など、『女性の性を商品化する風潮』を変える取り組みを具体的に進めます。」という公約を掲げた。
 売買春を巡る政策の領域において、売り手の女性ではなく買い手の男性に対する啓発や処罰を進める動きは、現在世界各地で広がりを見せている。

 2016年4月、フランス議会は「買春禁止法」を可決した。この法律は、文字通り買春=性的サービスに対価を支払う行為を禁止し、違反者に罰金を科すことを定めている。罰金の額は、初犯は1500ユーロ(日本円換算で約17万円)、再犯の場合は最高で3750ユーロ(約44万円)。買春した男性には、売春する女性が置かれている状況についての講習を受けることも義務付けられている。また買春者が性労働に従事する人(男女不問)に性暴力を振るった場合は、罪が重くなる。

■フランスが抱える売春と移民の問題

 この買春禁止法が制定された背景には、二つの目的があると考えられている。一つ目は、性労働に従事する女性の保護。買春禁止法の制定に尽力したグループは、社会党や共産党などの左派政党、そしてカトリック系の宗教団体で構成されている。
 彼らは、売春をはじめとする性労働は本質的に女性に対する暴力であり、性労働に従事している女性たちは被害者に他ならないという立場をとる。暴力や人身売買の被害から女性を救済するために、売春する側ではなく買春する側に罰則を科し、女性を保護した上で、売春をしなくても生活していける様な支援を提供していくべき、という考え方だ。
 今回の法律によって、売春する女性に対しては「離職プログラム」=職業訓練などの社会復帰を目的としたリハビリテーションが提供されることになった。
 外国籍の女性に関しては、売春を辞めてNPOの支援を受けるという条件付きで、6カ月間の一時滞在許可が得られるようになった。また人身売買の被害者に関しても、被害を告訴する場合、あるいは証人として法廷に立つ場合、特別に在留許可が得られるようになった。
 ちなみにフランスでは、売春自体は合法である。売春宿の経営や公の場での客引きは禁止されている。売春を合法にして売春する女性を保護対象にする一方で、買春を違法にして買春する男性客に罰則を科す方式は、1999年にスウェーデンで始まった。その後、ノルウェーやアイスランドの北欧諸国に広まっていったため、「北欧モデル」と呼ばれている。今回の買春禁止法の制定によって、フランスもこの北欧モデルを導入したと言えるだろう。

 二つ目の目的は、移民管理だ。フランスで売春などの性労働に従事している女性の大半は、中国などのアジア圏や東欧圏からの移民である。2003年に公の場での客引きが禁止されたことで、フランス人の売春女性は減り、代わりに外国籍の女性が売春に従事するようになった。こうした移民の増加とそれに伴う治安の悪化に歯止めをかけるためには、買春を禁止にして、移民の受け皿になっている性産業の拡大を防ぐ必要がある、という考え方だ。性労働に従事する女性の保護というのはあくまで建前であり、移民管理と秩序維持こそが買春禁止法の真の目的である、と主張する研究者もいる。

「見えない買春の現場 『JKビジネス』のリアル」より構成)