「なぜ彼女たちは裸になったのか」など、性を売る側の女性にばかりが注目されがちな売買春の現場だが、もう一方の当事者である男性側に目を向けることによって、見えてくるものはあるのか!?「見えない買春の現場 『JKビジネス』のリアル」を2月9日に刊行。「性の公共」をつくるという理念の下に、現代の性問題の解決に取り組んでいる坂爪真吾氏に語っていただいた。
 

■レッテル貼り、買春禁止で問題は……解決しない!

 買春禁止法の制定を巡って、フランスの議会で約2年間にわたり議論が行われた。買春が禁止になるということは、売春で生計を立てている女性にとっては言うまでも無く大打撃になる。また買春が違法行為になることによって、「法を犯してまで買いたくない」という優良な客は減り、「法を犯してでも買いたい」という悪質な客が増えるため、女性の労働環境は確実に悪化することが予想される。

 人道医療支援に取り組む国際NGO「世界の医療団」によって2011年に行われた調査では、性労働に従事する女性の半数以上が性暴力を受けた経験があり、4割近い女性がレイプされた経験があることが明らかにされた。女性を守るために第一に必要なことは、買春男性を取り締まることではなく、安全な労働環境を作ることだと言える。

 またこの法律は、性労働に従事する女性を「救済すべき被害者」としてみなしているが、現実は多様であり、自由意思で主体的にこの仕事をしている人もいる。そうした現実の多様性を無視して、女性側に一律に「救済すべき被害者」というレッテルを貼るだけ、男性側に一律に買春を禁止するだけでは、問題の解決にはつながらない。

 こうした懸念から、売春女性の当事者団体や支援に関わるNPOや研究者、そして「世界の医療団」は、この法律に対し反対派に回った。また取り締まる側の警察の組合も、時間的・予算的に買春男性の取締りが難しいという理由で反対した。
 こうした当事者の声や反対派の意見もあり、法案は上院で3回にわたって否決された。しかし、最終的には下院で可決されることになる。その際に賛成票を投じた議員は、577人のうち、わずか64人。そのうちの51名は法の制定に尽力した社会党員で占められている。国会議員にとって、買春や性産業というテーマに関しては、賛成の表明、反対の表明、いずれも有権者が嫌がる傾向がある。そのため採決自体に欠席する議員が多数派だったのだ。
 性労働に従事する女性当事者の声も、賛成派からは「騙されて言わされているに違いない」「恵まれた一部の人間の声に過ぎない」と決めつけられ、十分に届かなかった。(性労働に従事する女性当事者が希望した)政治家との面会も「犯罪者に違いないから」という理由で断られることが多かったという。
 こうした非民主的なプロセスにより、買春が一律で違法になってしまったこともあり、同法に対しては制定後も根強い批判がくすぶっている。

「見えない買春の現場 『JKビジネス』のリアル」より構成)