中学入試において今、「思考力テスト」と呼ばれる新しい形の問題を出す学校が増えつつあります。子どもの発想する力や創造する力を問うこのような入試が行われるようになったのはなぜなのでしょうか。また、決まった正解があるわけではないこれらの問題を、学校側はどのように採点するのでしょうか。
詳しいお話を、香里ヌヴェール学院(大阪府)の学院長で、『2020年からの教師問題』(ベスト新書)の著者・石川一郎先生に聞きました。


◆今話題の「思考力テスト」とはいったい何か?

 

 2020年のセンター試験廃止を含む大学入試改革について、報道で取り上げられる機会が増えてきました。センター試験に代わる新テストの内容がさまざまに議論されていますが、実は今、大学入試だけでなく、中学入試も年々変わってきています。
 「思考力テスト」をご存じでしょうか。国語、算数、理科、社会を中心とする教科ごとの従来型テストではなく、課題をその場で与えられ、それに対する自分の考えを発想し、表現する力が問われる入試が現在増えていて、それらを総称して「思考力テスト」と言われています。
 思考力テストを受験生に課す中学校は近年増加し続けています。大学入試の変化を受けて中学入試も早々に変化してきているということでしょう。これまでのように、各教科の教科書に書いてある内容を丸暗記して、それを使った演習を繰り返ししていればクリアできるという入試は、今後減っていくのではと思われます。

◆評価・採点の問題をどうするか

 さて、こういった問題を出題するにあたって、「どう評価するか」という懸念事項があると思います。中学入試において、なぜ今までこういった問題に手が付けられてこなかったかといえば、学校側、教師側がどのように採点すればよいかわからないという理由が当然大きかったからです。今、実際に思考力テストを導入している中学校でも、試行錯誤は続いていることでしょう。
 では私が学院長を務める中学校ではどうしているかというと、フィギュアスケートのような採点方法をとっています。まず、指定の字数以内で、9割以上書けていれば10点、自分の意見とその理由がセットで述べられていれば10点……というように、まずは技術点にあたる点数をつけます。
 その上で、意見や文章のおもしろさ、ユニークさを、複数人の審査員が採点します。仮に審査員が5人いた場合、一番いい得点を出した人と一番低い得点を出した人の点数をそれぞれ排除し、残り3人の平均を点数としてつけます。フィギュアスケートの演技構成点のようなものです。

 この評価方法に対し、「客観性が保てていないじゃないか」という批判をされる方もいらっしゃると思います。ただ、中立性や客観性という物さしだけが正しいかというと、決してそうではないのではないでしょうか。
 もちろん、現行のセンター試験がそうであるように、中立性を保証した試験が存在するのも良いとは思います。ただ、社会において何か物事を決める際に、果たして客観性・中立性が最も重要な物さしになるかというと、そうではないでしょう。「うちの学校はこんな生徒がほしい」という考え方に従って、各学校がそれぞれの物さしで入試を行っていいはずなのです。だからこそ、文科省による改革が進められている大学においては、アドミッションポリシーを設定し、入学者の受け入れ方針を受験者に教えることになったのです。

◆入試は就活のようになっていく

 そう考えると、入試はこれからどんどん就職活動のようになっていく気がします。最低限守るべき常識的なルールがあって、またある程度面接対策が可能ではあるけれども、可もなく不可もなくな型にはまった答えばかりしているようでは、なかなか評価されにくい。また、企業や職種ごとに欲しい人材の像があり、採用・不採用を決めるための物さしがそれぞれ全く異なるという点でも、入試と就活は似ていると言えそうです。
 暗記力重視だったかつての入試はもちろんのこと、就活においても、昔は、指示されたことを完ぺきにこなせる人の方が評価されやすかったかもしれません。かつて「体育会系は就活で有利」などという都市伝説が生まれたゆえんも、そのあたりにあるのでしょう。しかし、現在の就活はすでに質が異なります。今、コミュニケーション能力が高くて、クリエイティブな人間が企業に欲しがられるように、入試でもそういった人物が評価されるようになっていくと思うのです。