誰の言葉も関係ない、自分の好きなように生きればよかった

交際期間二十年余、夫と仲は良いのに、「ちんぽが入らない」。
生い立ちから教師時代の悩み、「入らない」夫との出会いから現在までを、赤裸々かつ誠実に内面を吐露した実話『夫のちんぽが入らない』(扶桑社)が、多くの人の心に刺さり、大きく話題になっている。
夫婦間の性の不一致に加え、子供を産むことや働くことなど、「普通に生きること」を悪気なく押し付けてくる社会との葛藤も描かれている。著者・こだまさん独占インタビューをした。

――作中では、「子供を産むこと」や「働くこと」について、日常生活の中で悪気なく「普通」の生き方をあるべきものとして、押し付けてしまう人との葛藤が描かれています。なぜ人は、他人の発言に傷ついた経験があるにもかかわらず、「普通」と違う存在にとらわれて、人を傷つけてしまうのでしょうか。

こだまさんご本人

「子供を産みなさい」というアドバイスに関しては、「人生が豊かになるよ」と善意ですすめてくれる人もいれば、「そうするのが普通」「産まないなんておかしい」と当然のように言う人もいます。「普通」をかざす人は無意識のうちに「普通」を強いられてきたのではないでしょうか。

 自分とは生き方や考え方が違うというだけ。相手の人格を傷つけたり、また自分を丸ごと否定されたと思い込んだりしないようにしたいです。

 過去の私は、親や世間から投げ掛けられる「普通」という言葉に縛られていました。そんなの関係ないと言い切れるだけの生き方をしていない後ろめたさもあり、常に自己嫌悪に陥っていました。まわりの目を気にしていたのです。

 いろんな生き方があっていいはずなのに、可能性を自ら握り潰すようなことをしていました。自分の頭で考えることを、長いあいだ放棄していたのかもしれない。誰の言葉も関係ない、自分の好きなように生きればよかったのだと今は思います。

――現在は主婦であり、作家であるこだまさん。かつては教師として働かれていました。幼い頃から人と関わることが苦痛だったこだまさんが、子供との密な関わりが求められる「教師」という職業を選ばれたきっかけはなんだったのですか。

 私は小さい頃から自分の考えを何も言えない子供でした。それを親に責められることが多かったけれど、学校の先生の中には「話すのが苦手でもいい。まずは得意なことを伸ばして自信をつけるのが先」と、好きだった作文や運動神経の良さを褒めてくれる人もいました。

 対人関係は相変わらずうまく築けなかったけれど、誰かに認めてもらえたことがとても嬉しくて、私もそうやって「伸ばす人」になりたかった。人付き合いが苦手なのは、どの職に就いても一緒。ならば、一番なりたいものになろうと思ったのです。