ただ「打つ」だけのチームではない

 だからといって、今回の侍ジャパンは「ただ打つ」だけのチームではない。効率的な攻撃パターンによって、着実に得点を積み重ねられているのだ。

 その一例が犠打である。
 日本の野球と言えば、脚を絡めた小技、つまり「スモールベースボール」のイメージが強い。第1回では9犠打に加え、参加国トップの13盗塁を記録して世界一となり、その重要性が再び見直されもした。しかし、小久保裕紀監督は、13年から指揮を執ることとなると、画一的な機動力野球からの脱却を目指してきた。小久保ジャパン発足時から腹心として手腕を振るってきた仁志敏久コーチは、かつてこう述べていた。

「小久保監督は、最初から『ノーアウトでランナーが出たら送りバントをして、1アウト二塁にする。そういう野球はしたくない』と言っていました。私自身、監督のそういった考えは大賛成です」

 今大会で日本が記録した犠打は7。その状況を振り返っても、「無死一塁からの送りバント」といった単純な攻めをしていないこが理解できる。

1次ラウンド
キューバ戦
4回(1-1)、1死一塁(9番・小林)

オーストラリア戦
5回(1-1)、1死一塁(9番・小林)
9回(4-1)、無死一、二塁(9番・小林)

2次ラウンド
オランダ戦
2回(0-0)、2回無死二塁(6番・坂本)
11回(6-6)、無死一、二塁(4番・鈴木) ※タイブレーク

キューバ戦
5回(2-4)、無死一、二塁(2番・菊池)

イスラエル戦
7回(5-0)、無死一塁(7番・鈴木)

 

 成功した7回のうち、実際に得点に結びついた犠打は4。その他も、同点や追加点が欲しい場面でのみ行われており、何より下位打線や繋ぎを求められる打順にしか犠打を指示していない。したがって、得点能力がある打者に、いかにいい理想的な場面を作れるか? を考慮した上での攻めがなされているわけだ。

 15年のプレミア12、WBC前の強化試合など過去の戦いを振り返っても、小久保ジャパンは明確な結果を出せていなかったし、戦術などにも不透明さがあったのかもしれない。ただ、こと打線に関しては、小久保監督が目指していた野球が、WBC本番でようやく結実した。これまでの戦い、成績を見てもそれは間違いない。

 それでも不安材料が尽きないのが野球である。強固な攻撃力の一方で、投手陣に関しては2次ラウンドまでの合計失点22(1試合平均3.7点)と、過去最低を記録する。
 準決勝で対峙するアメリカは、メジャーリーグで実績を残す猛者がズラリと並ぶ。とてもではないが、「最少失点で抑えれば」などと皮算用できる相手ではないだろう。

 だからこそ、打ち勝つ。

 5点取られれば6点を。10点失えば11点を奪い取る。小久保監督が4年間で築き上げた攻撃野球。世界一奪還が現実味を帯びてきた今だからこそ、相手がどこであろうと臆することなく発揮すべきである。

 打って、打って、打ちまくる。新たな日本野球を、強国に見せつける時が来たのだ。