稲作の普及とともに西日本から全国に派生

 姓氏研究家の森岡浩さんによると、地名・地形由来の名字は日本列島の西に行くほど多い傾向という。田中はその代表的な例で、10位以内のエリアは関西に集中する。

「田中は田園の中、という意味で、地形由来であり、同時に地名由来でもあります。この名字はどこの誰が始祖、というわけではなく、同時発生して広まったものと考えられます。じつは、“田中”がほかの地名・地形由来の名字に比べ、より関西偏重なのには理由があります」と、『一個人』4月号の中で森岡さんは解説する。
 その理由とは? 実は由来が田園、稲作であることと関係が深いという。

 

「稲作は大陸から西日本に伝来し、徐々に東北に伝播しました。当初は西日本に田園が多く、東北には少なかったために分布に差異が生じたものと考えられます。農民は基本的に引っ越しができなかったので、移動による拡散も少なかったのです」と、家紋研究会会長の高澤等さんは説明する。

 そんな、農耕文化に根ざし、庶民感覚の色濃い田中だが、歴史上では活躍した人物も少なくない。豊臣秀吉の下で大名になった田中吉政はその好例だ。
 高澤さんは「近江出身の田中吉政の家紋は釘貫で、藤原氏ゆかりの御上神社もこれが御神紋。この一族から派生した可能性もありますね」と話す。