結果が求められるのはプロの世界では当然のこと。でも2年や3年の短期契約では、種をまき、水をやり、いよいよ花開くかという所で終わってしまう。新刊『壁』を発売した野村克也氏が、昨今の行き過ぎた結果至上主義に喝! 「優れた監督が育たなくなる」と危機感を口にした。

監督が育たなければ、優れた選手も育ちません

 はたして監督の育成ができているのかどうかということですよね。

「組織はリーダーの力量以上には伸びない」とよく言われますが、球団にとって優れた監督を育てていくことは必要ですし、監督が育たなければ優れた選手も育ちません。

 しかし、現在のプロ野球界を見渡すと、積極的に監督の育成が行われているとは思えない。

 というのも、2年や3年という短期契約で、結果が出なければすぐに解任されてしまう。監督を信頼し、監督のビジョンのもとにチームが強くなっていくプロセスを余裕を持って見守る球団が少なくなった。つまり、結果至上主義なんです。結果が求められるのはプロとして当然だと思うが、それでは優れた監督は、育たないんですよ。

写真/高橋亘

 かつては長期間指揮をとらせる球団が多かったですよね。私が仕えた南海ホークスの鶴岡一人さんは、なんと23年間も監督を務めましたし、読売ジャイアンツの黄金期を築いた川上哲治さんは14年、西本幸雄さんは阪急ブレーブスで11年、近鉄バファローズで8年も指揮をとりましたよ。

 ひとりの監督が精魂込めて作り上げたチームがリーグ優勝や日本一に向かって一歩一歩進んでいくことが、球団としても当たり前だったんですよね。

 私もまた、ヤクルトスワローズを9年間率いたわけですが、これは当時の相馬和夫球団社長の理解があったからこそです。

 監督を要請された際、「1年目に種をまき、2年目に水をやり、3年目に花を咲かせます。それまで待っていただけますか?」とたずねたところ、「すべてお任せします」と答えるだけではなく、人事や補強などの面でも常に支えてくれました。

 その結果、4度のリーグ優勝と3度の日本一を経験することができたんです。

 さらに、相馬社長は監督の後継者を育てることも忘れませんでした。私が監督在任中に「次期監督の予定なので何とか育ててほしい」と託されたのが、打撃コーチをしていた若松勉でした。

 在任中の監督に、「次を育ててくれ」なんていう話、聞いたことないでしょ(笑)。私も相馬さんだったから、素直に聞けたんでしょうね。

 それに応えるべく、厳しく指導しましたよ。そして、私の後を引き継いで監督に就任して3年目、若松はチームを見事日本一に導いたんですよね。

 人間の評価は何で決まるのか――。「財を残すは下、仕事を残すは中、人を残すを上とする」という言葉があるように、私はやはり人を残すことこそが最も評価されることだと考えています。

 自分の球団だけではなく、プロ野球界全体で優れた監督を数多く育て、その監督がまた、優れた選手やコーチを育てていく。

 そういうシステムができてこそ、本当に日本のプロ野球の発展につながっていくのではないでしょうか。

明日は第三十回、最終回の質問です。