哲学的な問いを与える童話的世界

 そして何より惹きつけられるのは世界観とストーリーです。 流行し始めた当初は「知能指数が下がるアニメ」とも言われていました。しかし、表面上のゆるい雰囲気とは裏腹に、設定がかなり深くていろいろな情報が提示されているのにあまり詳しく語られない要素があったりと、かなり「考えさせる」作りになっています。
 物語の舞台となる「ジャパリパーク」には、バッテリーが切れて動かなくなったバスやボロボロに朽ち果てた観覧車などがあります。
 本編終了後に流れるエンディングでは、閉園された遊園地や廃墟の実写映像が淡々と流されたため、「ジャパリパーク」とはかつて人間がフレンズに会いに来て楽しんだ遊園地や動物園のような施設が閉園されて廃墟となったものではないかと感じさせられました。
 もしそうならば、人間たちはどこに行ってしまったのか。何故「ジャパリパーク」は放棄されたのか。パークの外には何があるのか。フレンズたちに襲いかかってくる敵「セルリアン」とは何なのか。そして、動物から生まれた他のフレンズたちとは違って明らかに「ヒト」としての知性を持つ「かばん」の正体は何者なのか。
  様々な謎が生まれましたが、結局最終回までで明かされたのは「かばん」の正だけでした。しかし、全部が説明されていない分、いろいろと考察する余地が残されています。
『けものフレンズ』とはSF的な好奇心を刺激したり、ヒトと動物の違いや関係について哲学的に考察しようとすれば出来る作品でもあるのです。
 実は、知能指数が下がるところか、むしろ上がる作品なのかもしれません。
「かばん」が「サーバル」と一緒に自分が何者かを知るために不思議な世界で旅をして、行く先々で奇妙なキャラクターたちと出会い、様々な経験をすることで成長していくという構造は、典型的な「ビルドゥングスロマン」であり「ロードムービー」でもあります。
 第一話では終始おっかなびっくりな表情をしていて「食べないでくださーい!」と逃げ回っていた「かばん」が、第十一話では「サーバル」を助けるために自分の身を犠牲にして戦い、最終回では一人で旅立っていくほどまで成長する姿を見せるのは感動的です。
「かばん」と「サーバル」の不思議な旅を見ていて個人的に感じたのは、この作品は現代人にとっての『銀河鉄道の夜』のような作品なのかもしれないということです。
『銀河鉄道の夜』も、内気で内向的な少年「ジョバンニ」が利発な少年「カムパネルラ」と一緒に不思議な世界で旅をして、奇妙なキャラクターたちと出会い、いろいろな経験をして「ほんとうの幸せとは何か」ということを語り合っていきます。