何かが苦手な誰かは、他の誰かが苦手な何かが得意だ

 二人の友情や、物語の背景に「死」や「カタストロフィ」の気配が感じられる雰囲気もどこか似ています。 幻想的な世界観で、様々なイメージが提示されているものの、これはこうであると具体的に作中で説明されている箇所はほとんどありません。だからこそ、現代でも様々な解釈が続けられ、読み継がれているのでしょう。
 宮沢賢治による「童話」なので、子供も楽しみことができますが、大人になって読み返すと新たな発見や感動を得ることもできます。 『けものフレンズ』も深夜に放送されましたが、朝や夕方に放送されて子供たちが観たとしても十分楽しめるのではないかと思われるほど、シンプルでわかりやすい作品です。しかし、大人が観ても考えさせられ、何かに気づくことができる作品でもあります。 突然見知らぬ世界に放り込まれて自分が何者かもわからず自信を持てずにいる「かばん」に対して、「サーバル」は「へーきへーき、フレンズによって得意なことちがうから」と明るく励まします。
 オープニング曲でも「けものは居ても のけものは居ない」「姿形は十人十色 だから惹かれあうの」と歌われています。
 道中で出会う様々な動物のフレンズたちも、明らかに自分たちとは異なる存在の「かばん」を否定することなく受け入れていきます。
『けものフレンズ』では、このように「何かが苦手な誰かは、他の誰かが苦手な何かが得意だ」といった多様性を受け容れる思想が貫かれています。 子供たちにも良い影響がありそうなのはもちろんのこと、社会の中で揉まれて、常に「否定」にさらされ続けている大人たちにとっても、自分の駄目なところも含めて受け入れて肯定してくれる「サーバル」やフレンズたちに癒やしを感じ、他者への接し方を考えていくきっかけの一つとなるのではないでしょうか。
 童話にも、深く考えさせられる作品がたくさんあるように、アニメだからといって侮ることはできません。
『けものフレンズ』とは、現代人にとって幻想世界に浸り、考えさせられ、世界の新たな見方に気付かされるような童話のようなものだとも言えるでしょう。