韓国前大統領の朴槿恵(パククネ)容疑者の罷免に伴う5月の大統領選に向け、左派系最大野党「共に民主党」は4月3日、各地の予備選で57%の票を得た文在寅(ムンジェイン)前代表(64)を党公認候補に選出した。また文氏は、慰安婦問題をめぐる2015年の日韓合意も「外交の積弊」として見直しを主張。ネット上の動画でも「歴史を忘れず、まともに扱われなかった慰安婦被害者に尽くす国にならなければいけない」と強調した。一方、そんな文氏を相手とする安倍政権は、慰安婦像問題で今後どんな対応を迫られるのか? そもそも「慰安婦像問題」の本質はなにか? 作家・適菜収氏は最新刊『安倍でもわかる保守思想入門』のなかで、安倍の歴史に対する卑劣極まりない態度を批判する。以下本文を抜粋して紹介する。

「韓国に対する日本政府の強気な対応は素晴らしい」と安倍絶賛を続けるアベウヨはミジンコ脳   

 2017年1月8日、安倍はNHKの番組で、韓国・釜山の日本総領事館前に新たに設置された慰安婦像について、「(2015年末の日韓合意に基づき)日本は10億円の拠出を既に行った。次は韓国がしっかり誠意を示していただかなければならない」と述べた

 翌日には、対抗措置として、駐韓大使の長嶺安政と釜山総領事の森本康敬を一時帰国させている。

 安倍の発言に韓国メディアは反発。中央日報(電子版)は、10億円を返還し、日韓合意の無効を訴える政治家の意見を掲載。また、前国連事務総長の潘基文(パンギムン)は、慰安婦像撤去と関連するなら、「10億円を返したほうがいい」と発言した。

 これは韓国メディアや潘基文が正しい。韓国国内でしっかり手続きを踏み、10億円を日本に返せばいい。当然、日韓合意は破棄すべきだ。

「韓国に対する日本政府の強気な対応が素晴らしい」などと喜んでいるミジンコ脳のネトウヨもいるようだが、日韓基本条約で解決済みの問題を蒸し返し、日韓政府が裏ですり合わせた河野談話を踏襲し、「不可逆的」に歴史を裁断したのは安倍である。

 簡単に経緯を書いておきます。

 1991年に日本政府が調査を始めたところ、200数十点に及ぶ公式文書に慰安婦の強制連行を示す資料は一つも見つからなかった。にもかかわらず、官房長官の河野洋平は、慰安婦連行に強制性があったとする「河野談話」を発表。

 その後、談話作成に関わった石原信雄元官房副長官の証言により、韓国政府が選んだ元慰安婦16人からの聞き取り調査だけで「強制連行」を認めたことが明らかになった。

 談話作成には韓国政府が直接関与。当時の政府関係者らの証言によると、日韓両政府は談話の内容や字句、表現に至るまで発表の直前まで綿密にすり合わせていた。聞き取り調査の結果は、在日韓国大使館に渡され、韓国側は約10カ所の修正を要求。日本政府の公式事実認定においても、韓国の修正要求を受け入れていた。

 当時、河野は「この問題は韓国とすり合わせるような性格のものではありません」と発言していたが、大嘘だった。要するに、自民党と韓国政府は日韓両国民を騙したのだ。

 安倍は河野談話がデタラメであることを知りながら、権力を握ると河野談話を見直すつもりはないと表明。オバマの前で「河野談話は継承し、見直す考えはありません」(2015年4月28日)と述べ、「戦後70年談話」で、河野談話を引き継ぐことを日本政府として確定させた。

 私は「軍による強制連行はなかった」などと見てきたようなことを言いたいのではない。慰安婦として働かざるを得なかったという点では広義の強制性はあったし、記録に残っていないだけで実際に強制連行はあったかもしれない。しかし、後世の人間の政治的判断により歴史を確定するのは、政治の越権であり歴史の冒瀆以外のなにものでもない。 (敬称略)

【最新刊『安倍でもわかる保守思想入門』より構成】