皆さん、こんにちは!チバレイです。
私の最新刊『ママは愛国』では、第1章で「日本の普通は世界のすごい」をテーマに、私の経験を織り交ぜて、日本が持つ豊かな文化について触れました。
今回は、監修の倉山先生と一緒に、私の郷里である福島県の酒蔵・人気酒造株式会社の遊佐(ゆさ)勇人(ゆうじん)社長をゲストに、福島のこと、日本の食文化の一つである日本酒のことについて、お話を伺いました。
遊佐さんは、私が出演していた『ジュウレンジャー』を作った東映に在籍されていたこともあるという経歴の持ち主です。その後、現在の蔵元としてのお仕事に移られ、震災があった2011年にウルトラマン基金の商品として「人気一 地球侵略 純米大吟醸」などユニークな商品を生み出されているほか、海外での日本酒販売のプロモーションも手掛け、まさに世界がすごい!と絶賛する日本酒文化を送りだす活動をされています。

千葉麗子『ママは愛国』×遊佐勇人(人気酒造社長)×倉山満 怪獣がつくり純米大吟醸?(前編より)

■「水」と市場の関係

千葉 遊佐さんの酒造は二本松なんですよね。

遊佐 はい、二本松です。福島県の酒造というのは、二本松、あとは会津に集中しています。面白いんですけど、福島県の二本松から北には、宮城県までほとんど酒蔵は無いのです。

「人気酒造」はウルトラマンの生みの親 円谷英二氏の故郷から程近い、福島県二本松市にある。

千葉 どうしてですか?

遊佐 そこから先に行くと水があまり適さないのです。震災の前に廃業した酒蔵もありました。元々厳しかったこともありますが、浜通りでは震災後再建を断念するところもありました。福島は海側へ行くほど硬水になります。硬水でも日本酒は造れるのですが、福島県では山側の軟水の地域に酒蔵が集中する傾向がありました。海側の浜通りは、漁業などの産業が多いので、景気がいい方なんですが、逆に山の中に行けば行くほど貧しかったですし。

千葉 そうですね。寒いし、昔は冬なんて出入りできなかったですからね。

遊佐 だから、昔は、会津とか二本松の酒蔵のお酒というのは、特級とか一級のお酒をみんな浜通りに送ってしまって、地元では二級酒しか飲まないという市場だったんです。

「キングジョーの柚子酒」のポスター。セブンを苦しめたキングジョーの手捌きが心憎い!  (C)円谷プロ/人気酒造

 日本酒の市場は都心ではブームですが、地方では厳しく、まだワインの方が売れている状況なんですけど、そこを何とかしたいなと思っています。
  実は、コスパで考えても、日本酒というのはすごく費用対効果がいいんです。流通コストを考えると、輸入ワインの販売価格はどうしても現地価格の3倍近くなってしまいます。逆に言えば、日本酒なら輸入ワインと同じ値段で3倍近く品質のいいものが飲めるわけで、日本人が日本酒を飲むのは理に適っています。

千葉 日本酒の原料ってお米ですよね。特に日本のお米って高級品扱いされていると思うんですけど、一番の理由って何ですか?

遊佐 日本の米のすばらしさというのは、全部飲める水で作っていることですね。他のアジアの米は飲めない水で作ってることが多いです。それは、そのお米を炊くと一発でわかります。

千葉 もしかして・・・炊き立てご飯のあの匂いですか?

遊佐 そのとおりです!

倉山 だから高級品になってしまうんですね。

遊佐 そうです。日本の高いコメというのは、本当に味が分かれば世界中に輸出できるんですよ。お酒と一緒で。
     日本酒も高いのに何で売れるかというと、コウジカビが生える高温多湿の気候、これと農耕民族の日本人が高品質のお米を作った、日本人の高度な細かい技術が結集してできたものなので、外国ではやろうと思ってもできないんです。ワインを輸入した時、流通コストで高価格になってしまうのと同じように、日本酒を輸出するとどうしても販売価格は高くなりますが、それでも勝負できるのは、他では作れないものだからです。

「ピグモンの泡酒」のポスター。ピグモンが好きなスパークリング日本酒!?          (C)円谷プロ/人気酒造

倉山 米を育てるにしても、お酒を造るにしても、単純に運べるような量の水ではすみませんからね。水を浄化する技術はあると思うんですが、それでもダメですか。

遊佐 残念ながら、浄化しても高品質な日本酒のレベルまでは望めないですね。世界中でこんなに良質な水が出るところはないんですよ。

千葉 これもまた不思議ですね!

遊佐 日本酒は8割が水なので、どうしても水が良くないとダメなんです。そこが日本の特徴で、世界中で作れない。だからこそ、日本酒を海外に輸出する意味があると思っています。

■酒を巡る文化の違い

遊佐 世界中、どこに行っても酒税法の成り立ちとか、国民の飲酒に対する考え方とかマナーとか全部、違うんです。何で課税されているかの意味も違うんです。だから整合性が取れないんです。日本というのは、日清戦争のときに戦費を賄うために最初に酒税をかけたんですよ。

倉山 タバコと酒がそうですね。もう、取れるものから取るという発想。

「謎の芋焼酎のひみつ」のポスター。右、芋を掘るピット星人。左、エレキング。   (C)円谷プロ/人気酒造

遊佐 でも、よその国、例えば欧米系は、発想の根本はアルコールに依存する人が増えてしまうとGDPが下がっちゃうとか。
    北欧とカナダは輸出するのが一番面倒臭いんです。専売公社なので、国に売らなきゃいけない。北欧なんかは大学の学費や病院は無料ですし、ほかの税金は安いんですけど、酒の税金だけは高い。
    ものすごく課税されるので売るのが大変なんです。ところが、例えばフィンランドの人というのは、海外に行くと両手にお酒を抱えて帰ってくるような、すごいお酒好きな国民なんですよ。みんなべろべろになるまで飲んじゃう人ばっかり。

倉山 気候的にも飲まなきゃやってられないようなところですからね。

遊佐 あんな酒好きなのに、どうしてこんな法律作るのかなと思ったら、やっぱり溺れる人が多いからなんです。

千葉 5年くらい前かな、リトアニアに行ったときにそう思いましたよ! 町歩いて、スーパーに行ったら、ああ相当な量を飲んでるなって、一目で見て分かるような人が絶対いるの。言い方ちょっと悪いけど、町歩いていても、そこらじゅうアルコール依存症なんじゃないかって思えてきちゃうくらいだったんですよ(笑)。

遊佐 でも、そうやって世界を回っていると、『ママは愛国』で書かれているのとは正反対に、世界の方がすごいなってところもあるなと感じますよ。

千葉 例えば?

遊佐 お酒の試飲会などをすると、イタリア人やフランス人、スペイン人の味覚と、その表現力、コメントが違うんです。味覚は日本人が一番優れていると思っていたんですが、違うなと思いました。

「ケムール人の挑戦」のポスター。躍動感溢れるケムール人がシュール!           (C)円谷プロ/人気酒造

千葉 お酒の品評会とかだと、美味しい!だけじゃダメですもんね。

遊佐 それもありますが、IQの高い人の中に、お酒とか食に対する興味を持っている人がもっとたくさん増えてほしいなと思います。商品としてのお酒だけではなくて、酒がはぐくんできた人付き合いの方法や愛でる文化を身につけていれば、もっと世界は広がります。

倉山 日本の官僚って勉強しかしていないから、外国に行ってもついていけないんですよ。そういうところも、実は外交力なんですけどね。

千葉 そうなんだ!

倉山 ちなみに、遊佐さんが特に力を入れている国というのはあるんですか?

遊佐 私がやはり売りたい先はフランスですね。お酒もよく飲んで分かっているし、食べ物のこだわりも強いし。一般の日本人のレベルと一般のフランス人のレベルというのはちょっと違うなと思いますね。

千葉 『ママは愛国』ではご紹介できなかったのですが、こんなに面白いお話があるなんて!日本酒のことももっと知りたくなりました。ありがとうございました。

※本ページで取り上げた商品の売上の一部は、ウルトラマン基金を通じて子ども達の未来を創る為の活動に役立てられます。
「ウルトラマン基金」(http://www.ultraman-kikin.jp/)