父・井伊直盛に続き、元許婚である直親まで、次々と愛する人を失っていく次郎法師だったが、ついに、女城主井伊直虎としての運命の歯車が回りはじめた。いままでとまったく違う立場で役に向き合う柴咲コウはどのように「直虎」を演じるのだろうか。

いざ城主の席に座ってみると
思っていた景色とは違いました

 

 戦国の世にあって、小さな領主でしかない井伊家の城主となったのは女。「直虎」と男の名を名乗り、リーダーとして生き抜いた一生を柴咲コウが演じる。

――城主になって真ん中(城主の席)に初めて座ったときの気持ちは?

「やったー って(笑)。でも、座ってみると思い描いていた景色とは全然違いました。そこに座ることで城主として自覚し、ある種の人を下に見るような心境になるのかなとイメージしていたんです。ところが実際は、みんなの気持ちを汲みながら、バランスをとって調整したり、客観的で冷静な視点が求められる席なんだなと」

 直虎は、幼い頃に出家して次郎法師と名乗る。桶狭間の戦いで父親の井伊直盛が戦死。跡を継いだ直親が今川氏真に粛清されるなど、跡取りがいなくなった井伊家を守るために、次郎法師が城主となった。政とは無縁の身だっただけに、不慣れでも逃げずに奮闘する姿が見どころの一つでもある。

――「力を持つということはさように怖いことなのか」というセリフは印象的でした。実際に人の上に立つことの難しさをどのように感じていますか? 

「立場は違いますが、今の自分とリンクするなとつくづく思うところです。これまで私の役は腰巾着的なのが多かったので (笑)。それだけに自分のやるべきことに集中できたのですが、今回は(主役として)この台本をどのように描き、表現していくかというところで、スタッフや共演者の皆さんと盛り上げていきたいと思っているんですけど…どうやっていいのか。一人っ子気質がでてしまって(笑)」

――直虎の苦労する気持ちが骨身にしみてわかると?

「そうですね。直虎さんも “さて何をすればいいのじゃ”と周りに聞いてしまうところから始まる。一から教えてくれる世話係がいるわけでもないし、模索しながら少しずつ構築していくので、私自身も何かを決めなければいけないとか、自分の役割を無理に決めつけず、まずは、みんなのテンションを高めて楽しくやれることを先導できればいいのかなと思っています」

――物語全編で重要なキーワードになりそうなのが竜宮小僧の伝説。柴咲さんも竜宮小僧になりたい?

「人知れず誰かの役に立つのが竜宮小僧です。その話が直虎さんの支えになっていますよね。想像上のものかもしれないけど、そういう存在になりたいと。私自身は(伝説を)割と信じるタイプ (笑)。目に見えるものだけがすべてじゃないはずだと信じているから。私もなれるならなりたいですね」

「歴史人」2017年5月号より)