所沢駅のS-TRAIN

 西武鉄道から東急、東京メトロなどに乗り入れる新型車両40000系使用の着席保証通勤電車S-TRAIN。3月25日に華々しくデビューしたので、さっそく乗ってみることにした。ただし、平日なので、運行区間は西武池袋線の所沢と東京メトロ有楽町線の豊洲間。土休日の元町・中華街~西武秩父や飯能間の行程と違って、純然たる通勤ルートである。

 

 まずは、所沢に向かい、所沢発豊洲行きのS-TRAIN104号に乗る。指定券は前もってウェブで取っておいたので安心だ。所沢に行く車中で、これから乗るS-TRAINの予約状況をチェックしてみると、まだまだ席に余裕があるようで拍子抜け。もっとも、平日の午後に所沢方面から豊洲へ向かう人が多いとは思えない。だからこそ、この列車を狙ったのだが、本来、豊洲発の列車を仕立てるために回送がてら、客を乗せているのであろう。

 

 ホームには、列車到着前からカメラを持った人が何人も待っている。3月下旬で学校が春休み中ということもあって、高校生や大学生くらいの若者や子供の手を引いた母親が目につく。やがて、小手指方面からピカピカの40000系電車が入ってきた。指定券を確認しながら、6号車と書かれた乗降口から車内へ入る。電車は4ドアの通勤型なのに、ドアは各車両1ヶ所しか開かない。指定券を持たない人が安易に入れないような仕組みなのだろう。車内は座席がクロスシートに設置されている。ロングシートにも変換できる車両だから、普通の通勤電車として使う時には、ドアが4つとも開閉するのだと思う。

 

S-TRAINの車内の様子

 指定券を見ながら座席を探すが、座席番号が目に留まらない。落ちついて見渡すと、荷棚の横棒に「4A窓側、4B通路側」のような表示を見つけた。デザインを重視したためか、ちょっと目立たない。表示方法には再考の余地があると思う。

 

 知らない人同士が相席にはならないくらいの混み方で、誰もいない二人掛け席は数えるほど。但し、鉄道ファンや親子の試乗組が半数を占めるのではないだろうか。定時にドアが閉まって、S-TRAINは滑るように所沢駅のホームを離れた。

 

 電車は、右に大きくカーブして、心地よいテンポで都心を目指す。やわらかい春の日差しが窓から入り込んでくる。住宅が多いけれど、雑木林や田畑も点在し、郊外らしい情景だ。

 

 9分で保谷駅着。進行方向一番前のドアだけが開き、2人ほど乗ってきた。降りる人はいない、というよりも降りられない。西武線内で乗車すると、降りることのできる最初の駅は飯田橋。それより手前の駅までの指定券は発売していないのだ。

 

 大泉学園駅を通過し、高架に駆け上がって石神井公園駅に到着。保谷駅と同じくらいの人しか乗ってこなかったので、満席にはならない。ここから練馬までは複々線区間。S-TRAINは、一番外側の線路をかなりのスピードで飛ばし、途中駅はすべて通過する。各駅停車の黄色い電車を追い抜き、優等列車らしい走りっぷりだ。S-TRAINにはコンセントが付いているので、持参したタブレットの充電を兼ねて使ってみた。ただし、テーブルがないので、機器を膝の上に載せるしかない。あるいは、窓の下の壁と座席の間に若干の隙間があり、椅子を支える台座があるので、そこに立てかけるかだ。クロスシートとロングシートとの兼用座席なのでテーブルを付けると面倒なことになるだろう。このあたりが特急車両との差であるが、欲を言えばきりがなくなる。ドリンクに関しては、前の座席の背面にホルダーがあるので、ペットボトルや缶飲料はここに置くと倒れたりはしないから安心だ。

 

 時刻表では、石神井公園駅を発車すると、次は飯田橋まで通過となっているが、実際はどうなのだろう。注意していると、まずは練馬駅に停車した。但し、ドアは一切開かない運転停車である。すかさず車内放送が入り、運転システムの変更のためしばし停車しますという。専門的に説明すると、保安装置をATSから地下鉄線用のATCに切り替えるためである。停車している間に、外側の通過線を池袋行きのレッドアロー号、それも昔の塗装のレッドアロー・クラシックが走り去って行った。

 

 2分程の停車後、S-TRAINは発車。いよいよここからは地下に潜る。と言っても、まだ西武の線路、すなわち西武有楽町線である。4分程走って、小竹向原駅。ここからは東京メトロに乗り入れる。会社が変われば乗務員も交代するので、またしても運転停車。やはり2分程停車する。

 

 この先は、すべての駅にホームドアがあるので、安全安心ではあるけれど、ホームの様子がよく見えないのは、「乗り鉄」としては物足りない。池袋でも運転停車するのかと思ったら、それほど減速することなく通過。副都心のターミナル駅を無視するとはあっぱれである。

 

 西武線内と違って、有楽町線には追い抜き可能な駅がないので、S-TRAINは時々徐行しながらのんびりと走る。石神井公園駅を出て30分近くたって、やっと飯田橋駅着。何人かが降りていった。ホームで電車を待っている人たちが、不思議そうな表情でS-TRAINを眺めていた。

 

 東京のど真ん中である麹町や永田町をゆったりとではあるが通過。ペットボトルのお茶を飲みながら流れゆくホームの様子を眺めるのはよい気分である。夜ならビールを飲みたいところだ。一か所とは言えトイレもあるので呑み過ぎても安心だ。

車内の案内板
豊洲駅に到着したS-TRAIN

 有楽町駅では、かなりの乗客が降りていき、車内はガラガラになってしまった。鉄道ファンといえども忙しいのか、豊洲まで乗り通す人は多くはない。銀座一丁目、新富町、月島と通過し、定時に豊洲に到着。所沢駅を出てぴったり1時間の旅だった。電車は新木場の車両基地まで回送するのかと思いきや、豊洲駅の有楽町方面にある留置線に引き上げていった。

 

 S-TRAINの本来の役目は、混雑した通勤時間帯に着席を保証することにあるので、その実態を見るため、豊洲駅17時ちょうど発の所沢行きに折返し乗車してみた。今度は、指定券を持っていなかったので、駅構内で購入。ただし、券売機が改札内に一カ所1台しかないので、誰もいなかったのでよかったものの列をつくっていたら、発車時間が気になりイライラするだろう。スマホやタブレットを使った予約の方が便利だと思う。券売機が少ないのは、鉄道会社側がウェブ予約するよう誘導しているようにも見える。

石神井公園駅を後にする所沢行きS-TRAIN

 所沢行きのS-TRAINは、先ほど乗ってきた電車よりも空いていた。先発した普通の電車が満員であっただけに拍子抜け。もっとも、有楽町線利用者が、すべて西武線直通の客とは限らないので、意外ではないのかもしれない。さすがに、今回は通勤客が多い。飯田橋では数人のビジネスマン風の男性が乗ってきたが、それでも半数ほどの座席が埋まった程度だった。まだまだ、S-TRAINの存在や乗り方を知らない人も多いと思われる。一旦快適な味を占めると510円の指定券はもったいないとは思わず、病みつきになる人もでてくるだろう。レッドアローや小田急ロマンスカーの通勤利用が繁盛していることを考えると、S-TRAINが空いているのは不思議な気もする。まだまだ様子見ということもあるのかもしれない。定着するには、少々時間がかかりそうだ。