今年、横尾忠則現代美術館(神戸市灘区)は5周年を迎えた。8月20日(日)まで開催されている記念展は「ヨコオ・ワールド・ツアー」。80歳を越え、なお第一線で活躍する画家•横尾忠則さんが、クリエイターが見聞きしたものから作品を製作する秘密を明かす。


 世界各国へと旅し、出会った人々や見たもの、体験を編集して自身の作品に取り込む画家•横尾忠則さん。「旅はイマジネーションの宝庫」という横尾さんが初めての海外旅行を体験したのは1964年のヨーロッパ。写真家の篠山紀信さん、デザイナーの和田誠さんといっしょに6カ国を巡るツアーに参加した。1964年に東京で開催されたオリンピックに選手を乗せてきた飛行機の引き返す便だったという。

展覧会会場で、自身の作品について解説する横尾忠則さん。

 いま、横尾忠則現代美術館で開催中の5周年記念展「ヨコオ・ワールド・ツアー」では、そのときの旅のスナップ写真や貴重映像が公開されている。今回の企画展を開くことになり、学芸員の平林恵さんが「発掘」した貴重な品々。ダリ、リサ・ライオン、カルロス・モンタナ、ジョン・レノン……世界の名だたるアーティストとの交流や作品の誕生を垣間見ることができる貴重なモノたちだ。
「旅に関連するモノたちも展覧会に加えようと考えました。そうしたモノも横尾さんの創作にとってインスピレーションの源だと。LPレコードがあると聞いて、LPは200枚ぐらいかなと思って、ご自宅を訪れたら2000枚! もありまして……」
と平林さんは笑いながら話す。

画家•横尾忠則さん(写真右)と学芸員の平林恵さん(写真左)

「1964年の旅行以来、横尾さんは世界各国を訪れています。なかでも1967年のニューヨーク、1974年以降繰り返し訪れるインドは横尾作品に多大な影響を与えました。さらに、1980年にはニューヨーク近代美術館でのピカソ展を機に画家に転身するなど、旅は彼の生き方に深くかかわっています。また、作品が世界に知られるようになると、海外での展覧会や仕事も増え、様々な分野の第一線で活躍する人々との交流が、横尾さんの表現の幅をさらに拡げていきます。 
 今回の展覧会では、ヨコオワールドがまさに世界に拡がっていく様子を、関連作品と資料から辿ります 」

 横尾さんに、創作の秘密を尋ねた。
「苦労の跡が見える作品は、重苦しいんですよね。だけど、苦労してない人はいないと思うんです。みんな苦労しているけれども、苦労は表に出ない―—そういう作品を作るまでには年季も必要で、実は大変なことなんです。もしかしたら、画家のなかには敢えてこれだけ苦労している、ということを見せようとしている人もいるかもしれないけど……。
 巨匠にしても、例えばピカソだって、シャガール、ミロ、ダリにしたって相当苦労しているはずです。でも苦労の跡を見せない。これ、非常に難しいわけですよね。でも、難しいのは、最初から苦労の跡を見せないようにして描いたときには、もっとつまらないものになるということ。(素晴らしい作品とつまらない作品を分けるのは)遊びの要素だと思います。何かを創ろうとするとき、苦労はしていても、大変でも、自分が楽しみながら、したかどうか―—。それが作品に現れるのだと思うのです」

 80歳を越えてなお第一線で活躍し続ける横尾さん。いつまでも少年のような笑顔を見せる横尾さんの生き方こそが、創作の秘密なのだ。

展覧会「ヨコオ・ワールド•ツアー」

展覧会「ヨコオ・ワールド・ツアー」
会期:8月20日(日曜日)まで
場所:横尾忠則現代美術館
   最寄駅(阪急王子公園、またはJR灘駅)
   神戸市灘区原田通3−8−30
開館時間:10:00〜18:00(金・土は20:00まで)
休館日:月曜日(7月17日は開館、7月18日は休館)
入館料:一般700円、大学生550円、70歳以上350円、高校生以下無料