健康寿命を延ばすためにも、人は働き続けるべきだ。もし働けなくなったとしても、そこには公的年金保険がある。60歳で起業したライフネット生命会長・出口治明氏が説く、生涯現役のススメ。

健康寿命を延ばすためにも、人は働き続けたほうがいい

 

 本来ならば、人間が生きていくうえで必要なリテラシーは中学校や高等学校で教えるべきだと思います。ただ、残念ながら今の日本では、諸外国のように、そうした授業はほとんど行われていません。

 たとえば、老後の貯蓄についてです。

「会社を定年退職する60歳までに3000万円は貯めなければいけない」とか「いやいや、3000万円あっても破産した人がいるらしい」という話は、ほぼ毎日のように耳に入ってきます。

 世の中には、そうした不安を抱き、貯蓄のことに気をとられている人も多いようですが、その背景として、やはりメディアに煽られていることが挙げられます。

 言うまでもなく、自分が何歳まで生きられるかなんて、誰にもわかりません。

 仮に85歳まで生きると想定し、それまでに必要な金額を定年延長を加味して65歳までに貯蓄できたとしても、66歳で死んでしまうかもしれません。逆に、100歳まで長生きして、追加で15年分の金額が必要になる可能性だってあるでしょう。

 

 つまり、その人にとって、退職後の生活にいくらぐらい必要になるかということも、また、誰にもわからないのです。

 そうしたことを考えて、ますます不安に駆られるくらいだったら、定年退職という発想をなくし、健康なうちはずっと働くようにしたほうがいいのではないでしょうか。動物は死ぬまで自分で食べ物を見つけてきますから、むしろそれが普通なのです。定年があり若い世代から年金をもらう方が異常なのです。

 そうすれば、毎月一定の金額が入ってくるわけですから、生活していくうえでも安心ですよね。同時に、「65歳までに3000万円を貯めなければいけない」などという不安も解消されることでしょう。

 日本では定年制が当たり前のように捉えられていますが、実は、他の先進国で採り入れている国はありません。

 日本は大変な労働力不足に直面しており、2030年には800万人以上の労働力が不足するという予測もありますので、いずれ定年制がなくなり、いくつになっても働きたい人が働ける環境が整っていくのではないかと思います。

 さらに、高齢者にとって、働くことのメリットはお金を得ることだけではありません。働くことは、どのお医者さんも口を揃えて言うように、健康を保つうえで最も適していることで健康寿命が伸びるのです。

 高齢化問題は介護問題にもつながりますが、現在のところ健康寿命と平均寿命には10年前後の開きがあり、それはつまり、介護期間が10年にも及ぶということでもあります。

 だからこそ、健康寿命を延ばすためにも、人は働き続けたほうがいいんですよ。もし働けなくなったとしても、そこには公的年金保険があります。

 こうしたリテラシーを持っていれば、老後を迎えてもそれほど怖くはないはずですが、この公的年金保険についても、メディアに煽られて、破綻を心配している方がいるようです。

 その点については、改めてお話ししましょう。

明日の質問は「Q.15 将来、公的年金保険が破綻すると言われることがありますが、本当ですか?」です。