気ままな生きものである猫は、犬と違ってオスワリなどの指示をなかなか聞いてくれない。雑誌の撮影時には、カメラのほうを向いてくれず、苦労することは少なくない。ここでは、雑誌『一個人』6月号の特集「猫個人~猫の愛し方、愛され方~」の撮影舞台裏をお届けしよう。

 オスワリしているシーンを抑えるには、猫の動きをしっかり観察する必要がある。座ってくれても、すぐに動いてしまうことはしばしば。根気強く待たなくてはならないこともあるり、シャッターチャンスを逃さないように集中力が必要だ。

▲京葉交差点宝くじセンター「吉田商店」(東京都江戸川区)の看板猫マコさん (C)ネコグラファー前田悟志

 望遠レンズなどがついたカメラに、おびえてしまうことも多い。本誌でも紹介している金時さんは役者猫だけあって慣れているが、外猫の場合はカメラを見るや否や、逃げてしまうこともある。そのため、姿勢を低くして、ゆっくり近づくのであった。
 カメラのほうを向いてもらうために声をかけることもあるが、それよりも効果が高いと感じているのは「物音」だ。ただし、大きくては驚いてしまうので、何かが動くような音を立てることがコツである。

 私は猫の撮影に立ち会う際、必ずビニール袋を持参している。これを揉むようにして音を立てると、猫が顔を向けてくれやすくなるのだ。大きすぎず小さすぎない、かつ、獲物が動いているような音をまねることができ、猫の関心を引きやすくなると感じている。
 ほかにも、じゃらし棒などのオモチャも重要なアイテムだ。動きのあるシーンを撮影するためだけでなく、まずは一緒に遊ぶことで、よそ者である撮影班に慣れてもらう目的もある。

 ただし、猫によってオモチャの好みがあり、さらに動かし方によっても食いつき方が異なるため、ただ動かせばいいというわけではない。愛猫家ならご存知だと思うが、猫の前で動かしても興味を示さない場合は、オモチャを隠してみたりと工夫する必要がある。せっかく用意したオモチャには見向きもせず、パーカーのひもに興味を示すこともあった。
 音が鳴るオモチャも効果があるが、猫によっては驚いてしまうので注意しよう。本誌6月号「猫個人」の撮影では、音が鳴るボールを用意したが、京葉交差点宝くじセンター「吉田商店」のマコさんはお気に召さなかった様子。しかし、船宿「岩田屋本店」の舟守猫アルバさんは気に入ってくれたようで、後ろ足で挟んでからじゃれるという遊びを楽しんでいた。

▲船宿「岩田屋本店」(千葉県浦安市猫実)の舟守猫たち。右からモカさん、アルバさん、無垢さん (C)ネコグラファー前田悟志

 こうして猫とふれあいながら撮影した写真の数々は、本誌6月号「猫個人」に掲載している。路上でビニール袋をカサカサさせたり、床に伏せてオモチャを動かしたりして撮影した、猫たちのさまざまな表情を楽しんでもらえれば幸いです。