<第85回>

10月×日

【恥辱のフォローリスト】

 

とある女性作家さんとお仕事をご一緒することになり、打ち合わせとご挨拶を兼ねて、電話でお話をした。

初めは互いに人見知りということもあり、会話も鈍く響くだけであったが、次第に打ち解け始め、最近の悩みなどを双方吐露するなど、中盤からは同業者としての絆さえ芽生えそうな勢いを見せた。

ああ、仲間って、ありがたい。BBQ大会を翌日に控えている時のハナマサよりも、ありがたい。

そんなことを思いながら通話を続けていると、ふとしたことから互いに共通の知人男性がいることが発覚した。

「あ、その人、知ってますよ。何度かお会いしたことあるし、twitterでもフォローしてます」

女性作家さんは、その男性がtwitterをやっていたことを知らなかったようで、電話の向こうでパソコンを開いて必死にその人のアカウントを探し始めた。しかし、なかなか見つからないようだった。

「だったら僕のtwitterページにいってもらって、僕がフォローしている人のリストから探したほうが早いですよ。たぶん、真ん中辺りにいるはずです」

そう伝えると彼女は、わかりました、とだけ言い、静かになった。マウスを操る小さな音だけが受話器から漏れ聞こえてくる。きっと僕のtwitterページに飛び、僕がフォローしている人たちを上から順繰りに眺めているのだろう。

僕は、彼女が尋ね人を見つけ出すまで、耳に電話を近づけたまま静かに待機の時を刻んだ。

そして、ゆっくりと、羞恥心に染まっていった。

恥ずかしい。

これ、すごく、恥ずかしい。

だっていま、僕は他人に「自分がフォローしている人を見られている」のである。

いや、確かに自分がフォローしている人は鍵付き設定にでもしないかぎり、誰だって閲覧可能だ。全世界に絶賛公開中だ。

でも、なぜだろう。いま、こうして電話の向こうにいる相手が黙って僕のフォローリストを見ているという状態、これはなんだか、顔から火が吹き出るほどに、恥ずかしい。

どうしよう、「へえ、意外と峰なゆかとかフォローしてるんだ…」とか思われていたら、どうしよう!

途端、こんなアイディアが浮かんだ。

SMプレイの一環として、女王様が客のtwitterページを閲覧し、フォローリストを読み上げる。

「おや、最上もがをフォローしてるんだねえ。SNSのささいなきっかけでアイドルと付き合えるとでも思ったかい!(ビシッ!)」

「ははーん、津田大介をフォローしているねえ。知的な人間に思われたいブタ野郎が!(バシッ!)」

「あらやだ、無印良品の公式twitterアカウントまでフォローしているじゃないか。敏感なのかい?セール情報に、敏感なのかい?ハレンチだねえ!(ビシャリッ!)」

※()内は鞭を打つ音

そんな新サービスのアイディアを頭に巡らせながら、とにかく電話先の彼女が早くお目当てのアカウントを見つけてくれるよう、祈った午後であった。

 

*本連載は、隔週水曜日に更新予定です。お楽しみに!

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