「やりたいことをみつけて、それを仕事にしたい」、やりがいのある仕事という幻想に縛られてはいませんか?ライフネット生命会長が説くいい仕事に出会うための哲学。

まずは、縁あって携わることになった仕事を楽しむこと

 せっかく働くのなら、自分がやりたいことを見つけ、それを仕事にして、やりがいを持って働きたい――。

 世の中には、そうした考えを持つ人が多いようです。そのせいか、やりたい仕事が見つからないことを嘆く大学生に出会うことも多々あります。

 ただ、まだ実社会に出ていないのに、自分が本当にやりたい仕事を見つけられる人が、たくさんいるとはとても思えません。

 人間の歴史から見て、最初からやりたい仕事に就き、やりがいを持って働き続けて、人生をまっとうできた人は、果たしてどれくらいいるでしょうか。
 おそらく1パーセント未満ぐらいで、ほんのわずかの割合に過ぎないだろうということは、誰にでも容易に想像がつきそうです。

 かくいう僕は、大学卒業後に日本生命に入社し、60歳のときにライフネット生命を開業して、現在に至ります。

 生命保険に関する本を何冊か出し、今でこそ「生命保険の生き字引」などと言われることもありますが、実は、学生時代は弁護士を目指していました。

 しかし、残念ながら司法試験に落ちてしまったため、縁あって生命保険の道へ進むことになりました。当時、生命保険にはそれほど興味はなかったのですが、気がつけば40年以上、この業界に携わっています。

 僕の経験から言いますと、やりがいという言葉に囚われすぎるあまり、せっかく縁があった仕事を軽視してしまうのはとてももったいないことです。

 仮に、周囲の社会人に今の仕事に就いた動機について尋ねたとしても、「たまたま」とか「人に勧められたから」と答える人が多いのではないでしょうか。
 それならば、そのご縁を大切にし、まずは、たまたま携わることになった現在の仕事を楽しむようにしたほうがよほど建設的ではないでしょうか。

 もちろん任された仕事をまずはしっかりとやり切ることが大前提ですが、結果的に、やりがいのある仕事という幻想に縛られて何もしないよりも、ご縁を大切にして前に進む方が、人生でいい仕事に出会う確率は高くなると思います。ご縁に出会えて良かったという感謝の気持ちが、あなたの道を開くのです。
 ただ、いくつになっても、それこそ、僕と同じ60代になったとしても、今の仕事が本当に天職であるとは、なかなか断言できるものではありません。

 果たして、自分なりにやりたい仕事をして、人生を楽しんで、一所懸命生きることができたかどうか――。

 すべては、人生の最期に判断するしかないと僕は思っています。

明日の質問は「Q.23 そもそも仕事そのものについてはどのように捉えるべきですか?」です。