『一個人』2017年6月号の特集「猫個人(にゃんこじん)」では、東京の猫町として浅草と谷中を紹介している。浅草は猫にまつわる古い歴史を持ち、現在も猫町として人気が高い。
▲「谷中銀座」は、猫のオブジェだらけ。猫にまつわるお店も密集 (C)Sakura Ishihara
▲谷中界隈で見かけた町猫 (C)Sakura Ishihara

 東京の猫町といえば、『一個人』2017年6月号の特集「猫個人(にゃんこじん)」でも紹介している谷中が有名ではないだろうか。昔ながらの街並みが残る下町で、猫モチーフのグッズやスイーツを扱う店が多い。いまでは世界的にも知られる存在となり、外国人観光客も多数訪れている。

 本誌ではさらに浅草も紹介しているが、谷中と比べると猫町というイメージがあまりないかもしれない。しかし、歴史的にはもちろん、現在も猫町といわれる理由がある。

 浅草が猫町として知られるようになったのは、今戸神社の存在が大きい。生活苦のため手放した愛猫をモデルに、老婆が片手をあげた猫の人形を作ったところ、これが評判となって生活を立て直したという逸話がある。これが招き猫の原型で、次第に今戸焼で作られるようになったとされる。

▲招き猫発祥とされる「今戸神社」 (C)Sakura Ishihara

 江戸時代の浮世絵師、歌川広重の『浅草田甫酉の町詣』という作品にも、格子窓から外を眺める猫が描かれている。本作の舞台は、吉原の遊女たちが暮らす控屋だ。
 当時、猫を飼う遊女は多かったという。また、猫と遊女のしぐさなどが似ていることから「猫は傾城(遊女)の生まれ変わり」ということわざもあるほどで、猫と遊女の関係は深い。吉原といえば日本最大級の遊郭であり、浅草の裏手にあたる。きっと猫が多く暮らしていたことだろう。

 現在も猫を愛する人たちが多いようで、喫茶店やアパレルショップなどに看板猫がいることも。猫カフェも複数あり、浅草観光に訪れた外国人に人気のようだ。
 さらに、猫好きの作家によるハンドメイドの猫雑貨やアートなどが並ぶ「ニャンフェス」や、猫の写真店などのイベントも開催されている。このように、昔から猫好きが集まるという背景があり、今回の猫町特集に浅草も紹介させていただいた。

 しかしながら、外猫の数は減っているのか、昔と比べると見かけなくなった。浅草の人々にも訪ねてみたが、やはり同様に感じているようだ。少し寂しい気もするが、きちんと飼われている猫が多いということなら、これほど喜ばしいことはない。

 浅草は谷中と比べると、外猫との遭遇率がたしかに低いかもしれない。しかし、猫を愛してきた歴史は決して負けることなく、現在も猫型のせんべいや猫グッズを扱う店がじつは多い。こうした隠れた猫アイテムを探すことも、浅草散策の楽しみのひとつである。