連日の強い日差しに、早くも夏を感じる季節になってきました。夏のレジャーに海外旅行を計画している人も多いのではないでしょうか。ところで、海外旅行には飛行機での移動がほぼ必須ですが、つい最近では海外の航空会社が乗客を無理やり引きずり降ろしケガを負わせたことが大きなニュースになりました。
 そこで旅に備えて知っておきたい法律知識をアディーレ法律事務所の岩沙好幸弁護士に伺いました。
良い旅を

もしオーバーブッキングに巻き込まれたら

 そもそも、航空会社が飛行機の座席数よりも多くの乗客の予約を受け付けてしまうオーバーブッキングは、なぜ起きるのでしょうか?
 ないものを売るのって違法のように感じるのですが……

「座席数以上に予約を受け付けることは許されないようにも思われますが、実はこれは法律違反とはなりません。航空会社は、直前のキャンセルを見越して、定員割れを防ぐために座席数よりも多くの予約を受け付けるのが一般的です。そして、オーバーブッキングが生じた場合の免責約款を設けているのが通常で、この免責約款は許容されているのです」

 定員割れで空席を出すよりは、キャンセルを見越して多目に予約を取ることは、法律的には問題ないのだそうです。とはいえ、席が足りなくなってしまったらどうなるのでしょうか。

「オーバーブッキングで席を譲ることになった場合には、約款に従い、航空会社から補償を受けることができます。たとえば、JALでは、自主的に席を譲ることに協力してくれた人に対して金銭やマイルで補償をしています」

 航空会社によって、補償される金額の上限は決まっているそうです。ニュースになったユナイテッド航空は、最大1万ドルへと補償金額を上げたのだとか。それなら、ちょっと譲ってもいいかも……。

失くした切符が出てきたら払い戻される

 旅の交通手段は飛行機だけではありません。他にもよくあるトラブルをいくつか教えていただけますか?

「知っておきたい旅のトラブルの例としては、電車に乗っている間に切符を失くしたときのことですね。この場合、たとえばJR東日本では、失くした切符と同じ区間の切符を買いなおす必要がありますが、実は1年以内に紛失した切符が発見されれば払い戻しを受けることができますので、ぜひ覚えておいてほしいですね。

 また、不幸にも旅先で交通事故に遭ってしまうこともあり得ます。これにより旅先で入通院を余儀なくされた結果、購入済みの帰りの乗車券が無駄になってしまうこともあります。この場合は、相手方から当該乗車券の運賃分の賠償を受けることができる可能性があります。」

 切符を払い戻してもらえるのは知りませんでした。失くしたと思って仕方なくもう一度支払い、あとから出てきて悔しい思いをした記憶が……。もったいないことをしていたのですね。

旅先の食事でアレルギー症状が出たら……

 甲殻類アレルギーを持っている友人がいるのですが、一緒に旅行に行くときに結構気をつかいます。宿に電話をして食事の内容を確認したり…。もし、それでもアレルギー症状が出てしまったら宿に責任をとってもらえるのでしょうか。

「特定の食品を摂取するとアレルギー症状が出るということを事前に宿に伝えておいたにも関わらず、その食品を含む食事が提供されたとしたら、治療費や慰謝料を請求できる可能性があります。一方で、そのようなことを事前に宿に伝えていなかったとしたら、宿に過失は認められず、治療費や慰謝料を請求できない可能性が高いです。泊まる前に、きちんと宿には確認を取り、アレルギーを伝えるのを忘れないようにしましょう」

 何事も、事前の準備が大切なんですね。

「旅先では、慣れない土地で思わぬトラブルに巻き込まれることがあります。ツアーなどであれば、面倒でも細かい約款をきちんと読んで把握しておくこと、判らないことは事前に旅行会社に問い合わせるなどの準備が必要です。
特に海外旅行は、言葉が通じなかったり、法律が違ったりすることでトラブルに巻き込まれる可能性が高くなります。事前にしっかりと調べておくと安心して旅行を楽しめるでしょう」(アディーレ法律事務所・岩沙好幸)

【お話をうかがった方】

 

岩沙 好幸(いわさ よしゆき)さん
 弁護士(東京弁護士会所属)。慶應義塾大学経済学部卒業、首都大学東京法科大学院修了。弁護士法人アディーレ法律事務所。パワハラ・不当解雇・残業代未払いなどのいわゆる「労働問題」を主に扱う。動物好きでフクロウを飼育中。
近著に『ブラック企業に倍返しだ! 弁護士が教える正しい闘い方』(ファミマドットコム)。
弁護士 岩沙好幸の白黒つける労働ブログ』も更新中。