ここ1年でブロックチェーン技術を取り巻く社会は大きく変化した。連日、ニュースの見出しにブロックチェーンおよびビットコインという言葉が踊っている。「1990年代のIT革命以上」と言われている、ブロックチェーンのインパクトとテクノロジーの進化が巻き起こす第4次産業革命を直前に控え、我々はどう備えればいいのか。『ブロックチェーン入門』(KKベストセラーズ)の著者、森川夢佑斗氏に、ブロックチェーンを実用化した暗号通貨を中心に解説してもらった。

「ビットコイン」、「イーサリアム」、そして「リップル」

仮想通貨にはそれぞれの特長がある

 

 さて、前回はブロックチェーン技術を用いた暗号通貨(仮想通貨)の登場により、銀行を介さず個人間で直接的に送金を行うことが可能となったことをお話しました。そのため国際送金に向いていると言えるのですが、現在の経済活動の大半が法定通貨で行われていることを考えると、ビットコインで送金を行いビットコインのまま利用するということは少ないでしょう。

 そのため結果的には、取引所と呼ばれるビットコインと現地の通貨とを交換する業者に頼り、ビットコインから法定通貨に変換する必要が出てきます。

 たとえば、日本で出稼ぎで稼いだお金をフィリピンへ送金する際、数万円から数十万円単位と大きな金額となります。これをビットコインを利用して送金を行おうとした場合、まず持っている通貨を取引所で、ビットコインに交換します。

 その際には、レートの影響や取引所での手数料がかかってしまうことになるでしょう。そしてビットコインを送金した後も、今度は受け取った人が、さらにビットコインをフィリピンの現地通貨に交換できる取引所でペソに換金します。この時も同じくレートや取引手数料がかかってしまいます。

 このため、ビットコインと法定通貨を行き来してしまうと、仲介業者がいないために手数料などが低いという、ビットコインおよびブロックチェーン自体のメリットを最大限活かすことができないのです。

 ビットコインなどの暗号通貨自体でも国際送金は可能なのですが、この問題に目をつけ、既存の枠組みとブロックチェーン(厳密には、分散型台帳技術)としてのメリットを活かそうと考えたのが「リップル」というプロジェクトです。

 リップルは、Googleが出資しているほか、国内ではSBIホールディングスやみずほフィナンシャルグループが実証実験を行っています。その他にも、リップルが主導しバンク・オブ・アメリカやスタンダード・チャータード銀行やメリル・リンチも参加する「グローバルコンソーシアム(Global Payments Steering Group)」に三菱東京UFJ銀行が参画するなど、大きな注目を集めています。

 もう少し、リップルについて詳しく見ていきましょう。リップルは、シリコンバレーの「Ripple Labs, Inc.」によって開発・運営されています。その意味でも、ビットコインに管理主体がいないこととは対照的です。

 リップルネットワークは送金を行うユーザーと、ユーザーの資産を保有・管理する「ゲートウェイ」によって構成されています。

 たとえば、Aさんがゲートウェイで100万円と引き換えに受け取ったIOUをBさんが購入した場合、BさんはそのIOUの所有権を得て、ゲートウェイからいつでも100万円を受け取ることができます。 ゲートウェイはユーザーから資産を預かり、IOU(I owe you=借りがある)と呼ばれるデジタル借用証書を発行します。IOUは、ゲートウェイに預けた資産を受け取ることができる借用証書であり、預けた資産の所有権を示していると捉えることができます。 そしてユーザーは、このIOUをリップルネットワーク上で取引することで、資産の所有権を移転します。

 

 このようにリップルネットワークにおけるゲートウェイは、銀行に近い役割を担っています。そのため既存の枠組みに当てはめやすく、実際に大手国際銀行の数々がリップルと提携を行っています。

 しかし、IOUの価値の裏付けは、個々のゲートウェイによって成り立っているので、仮にゲートウェイが破綻してしまった場合、預け入れていたお金が返ってこない場合が起こりえるというリスクも存在します。

 ただし今後は、銀行が相互にリップルネットワークを利用することで、国際送金を即座にかつ低い手数料で行うことができる可能性があるのです。