「終活」や「エンディングノート」という言葉が一般的になっているように、生前のうちに自身の葬儀やお墓の準備をしたり、残される家族が財産の相続を円滑に進められるようにと、計画を立てる人が増えている。中でも特にデリケートな遺産の相続問題。本人訴訟も可能だが、弁護士に依頼するメリットはどこにあるのか。『磯野家の相続』(すばる舎)の著者である、東京永田町法律事務所代表・長谷川裕雅さんにお話を伺った。

相続問題は必ずしも弁護士をたてなくてもよい

 医師の外科手術はさながら神の領域の世界です。天の創造物である人間を治療する職人芸の域に達した手段に対する報酬ですから、本当に助かりたい人は全財産をなげうってでも名医に手術代を払うのかもしれません。少なくとも、医療費を節約するために自分で手術をしようという人はいません。
 それに対して弁護士の代理人活動は、人が作った法律を操る極めて人間らしい営みです。訴状を書く技術である文章作成自体も、巧拙はともかく、誰もがデスクワークで日常的にしていることです。
 民事訴訟では弁護士を立てる義務はなく、本人訴訟(※注1)が認められています。相続問題でも、弁護士を立てずに裁判をすることが法的には可能です。では、相続問題を解決するために弁護士に依頼する意味はどこにあるのでしょうか。

交渉相手との関係がよくない場合、頼りになる

 調停係属中にセカンドオピニオンを求めて、相談に来られた方がいました。そして翌春には再度相談のうえ、事件の依頼を受けました。当初はご自身で手続きを進めていましたが、最終的には弁護士をつけることになったのです。どうやら、初めは自分でできると思っていたものの、事態が全く進展しないことに業を煮やして、弁護士に依頼することにしたようです。
 会っても目も合わせない。交渉をする前提条件を欠くほど、関係が良くない当事者は珍しくありません。当事者間の対立感情が激しい場合は、弁護士をつけた方が、双方ともに嫌な思いをしなくて済みます。些末な議論に時間を取られることなく、合理的に物事が進みます。

弁護士になにを依頼するのか

法律のプロ・弁護士に依頼をすれば、何らかのメリットが生まれるはずだが……

 さて、弁護士への依頼内容ですが、主には任意交渉と調停、審判の方法があります。
 任意交渉とは、裁判所での手続き以外において相続の当事者と交渉すること。ただし物わかりが良くない相手との任意交渉は、はっきり言って時間の無駄です。
 相続人間で遺産分割協議がまとまらないときは、調停を申し立て、家庭裁判所の力を借ります。調停委員は各相続人に対して、妥当と思われる分割案を提案します。

審判は、調停でもまとまらないときに、家事審判官(裁判官)が各相続人の主張や生活状況などを考慮して、分割の判断を下します。

 
(※注1)本人訴訟

本人訴訟とは弁護士を立てずに、つまり訴訟代理人なしに当事者本人が自分で行うことをいう。弁護士を立てることが義務ではない日本の民事訴訟では、7割が原告もしくは被告、またはそのその双方が弁護士などの代理人を立てない訴訟で行われているとされる。

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