姨捨駅に停車中の「ろくもん」

 少し前に、しなの鉄道の観光列車「ろくもん」信州プレミアムワインプランに乗り、そのレポートを発表した。その旅の印象がまだ薄れないうちに、今度はナイトクルーズトレインとして絶景で名高い姨捨駅を訪問するという。同じ列車であっても、コースが異なれば非常に興味深い。お誘いを受けたので、喜んで参加を表明し、列車の発車駅上田へ向かった。

 前回の「ろくもん」は軽井沢駅発で上田駅が終点だったので、今回は、その続きという感じがしないでもない。ともあれ、ホームで待っていると、すっかりお馴染となった「ろくもん」が長野方面から回送列車として到着し、女性の客室乗務員がホラ貝を吹くとともにドアが開いて車内へと案内された。

ホラ貝吹鳴が発車の合図

 

内で出されたコース料理

 前回同様、ふすま張りの和風個室に案内される。列車が動き出すと、まずは、ウェルカムドリンクとしてワインでもてなされた。夕暮れの車窓を眺めながら、テーブルに置いてあった二段の重箱を開けて食事がスタート。午後5時過ぎと、やや早い夕食時間ではあるけれど、お昼はサンドウィッチの軽食で済ませていたので、美味しく食べることができた。

 重の中には、信州野菜の酢味噌添え、信州牛のローストビーフ、信州サーモンつけ焼きなど地元の食材を活かした御馳走が並んでいる。長野県の小布施にある名店「鈴花」のコース料理で味は申し分ない。アテンダントさんの説明を聞きながら少しづつ食べていく。ビールを注文すると、軽井沢高原ビール、上田ゆかりの真田幸村にちなんだ赤備(あかぞなえ)という地ビールが2つ運ばれてきた。

 戸倉駅、屋代駅で停車すると、駅員さん達が手を振って挨拶してくれる。しばし、箸を置いて、手を振り返す。ほのぼのとした気分の中、列車はのんびりと進んでいく。

 のどかな田園風景をさえぎるように、突然轟々と音を立てて列車は鉄橋を渡る。長野一の大河千曲川だ。渡り終わると、立派な高架橋を驀進する北陸新幹線と並走しつつ篠ノ井駅に到着。しなの鉄道を後に、JR東日本の篠ノ井線に入る。

 7分停車の間に乗務員が交代するけれど、車内の客室乗務員などのスタッフはそのまま乗り続ける。ここで列車の進行方向が逆になり、冠着山めざして進んでいく。稲荷山駅を過ぎる頃から勾配がきつくなり、車窓を眺めていると、目に見えて山を登っているのが実感できる。登るにつれて善光寺平の広がりが手に取るように分かる。時々、線路際の木々に遮られるので写真は取りづらいけれど、絶景であることに間違いはない。姨捨駅付近が日本鉄道三大車窓のひとつであると言われるのは充分に納得できる。

 列車はまもなく速度を緩め、一旦停車する。すぐに進行方向が逆になり、ゆっくりとバックしながらホームへと入っていく。スイッチバックの姨捨駅到着である。

姨捨駅で遭遇した「ろくもん」と「リゾートビューふるさと」
和菓子と抹茶のセット

 40分近く停車するので、車外に出てみる。食事は少し前に終わっている。到着ホームは、崖の上にあり、下には先ほど車内から眺めてきた善光寺平が一望のもとだ。まだ日没前で明るい。真下に線路があるが、この列車が登ってきた線路である。篠ノ井方面から長野発名古屋行き特急「しなの」が登ってくる。特急は、姨捨駅に停車しないので、スイッチバックしてホームに入ることなく、直進して去って行った。しばらくすると、JR東日本の観光列車「リゾートビューふるさと」が反対側のホームに到着した。この列車は、すぐにバックしてホームを離れ、すぐにもう一度向きを変えて私たちが立っているホームの真下を通り過ぎて長野方面へ去って行った。そうこうするうちに発車時間となり、ホラ貝の合図に促されて車内へ戻る。

 列車は戻るようにホームを離れ、本線に合流して先を目指す。やがて、蒸気機関車の時代には難所だった冠着トンネルを難なく抜け聖高原駅に到着。ここではドアは開かず、車内で待機するうちに10分程で動き出した。

2度目の姨捨駅到着時は日没後だった

 聖高原より先へは進まず、列車は進行方向を逆にして折り返す。姨捨駅でずっと停車していたかったのだが、定期列車の発着の妨げとなるので、聖高原駅まで一時的に疎開したようだ。再び冠着トンネルを抜け、本線を外れてもう一度姨捨駅に到着した。今度は山側のホームなので善光寺平は車内からは見えづらい。そういったわけでもないだろうが、絶景を見るためにちょっとだけ散歩にでかけるオプショナルツアーがあるとの話だ。旗を持ったアテンダントさんに先導されて駅を出る。ようやく暗くなったので夜景を見るには申し分ない。

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