メール全盛の現代では、ラブレターを書く人は少ないかもしれません。ですが、わざわざ便箋にひと文字ひと文字気持ちを書き記した手紙だからこそ、気持ちが伝わるのです。遺言もラブレターと同様です。遺された相手にしっかりと届くことを意識して書きましょう。遺言を書く際の注意点を、東京永田町法律事務所代表の長谷川裕雅さんに伺いました。

具体的かつ明確に、理由をきちんと明記するべし

 遺言は、残された家族に対するラブレターのようなものです。相手を思って書くもので、独りよがりではいけません。遺言を書いたがゆえに、相続人間でトラブルが発生することもあり得るのです。
 遺留分を侵害する遺言は直ちに無効にはなりませんが、相続人が遺留分減殺請求権を行使した場合はトラブルのもとになります。遺留分を侵害せずに分配をすることこそが、遺言作成者の腕の見せ所。
 財産の分配方法も、相続人にとって合理的な分割方法になっているかどうか。実家から離れて生活している相続人に対して実家の不動産を相続させても売却される可能性が高く、実家をその相続人に受け継いでほしいという遺言者の気持ちは結局叶わないことになってしまいます。どの財産を、どの相続人にあげるか、明確に示しましよう。
 好きな気持ちを吐き捨てるように書き殴ったラブレターでは、フラれるのがオチです。なぜ好きなのかを書かなければ、誰にでも同じことを言っていると思われてしまいます。遺言も同じで、なぜこのように分割方法を指定するのか、その理由を書きましょう。思い悩んだ末に書いた遺言であることを、わかってもらう必要があります。

遺言が無効になるパターンに注意

遺言もラブレターと同じ。デリカシーのない書き方では相手に気持ちが届かない。

 2人で1通の遺言を書いたらアウトです。夫婦が遺言を残す場合にやってしまいがちなミスですが、2人の作成者が1通の遺言を共同して作成すると、遺言そのものが無効になってしまうので注意が必要です。
 各々の真意が見えないこともありますが、取り消しや撤回の際に自由にできないことが理由です。小学校のころでしたが、友人2人が同じ女の子を好きになって、同じ手紙で愛を告白していました。子供のころの話なので可愛らしいで済まされますが、大人がやったらただの間抜けです。
 夫婦のうちどちらが先に亡くなるかはわかりません。相続の発生順で場合分けをし、いずれの場合でも対応できるように、予備的遺言を作成することをお勧めします。

 
<遺言が無効になってしまう4パターン>
1、遺言能力を欠く者の遺言 遺言者が満15歳に達しない場合など
2、遺言内容が不明確な場合 遺言の目的物が記載されていない場合など
3、遺言内容が実行不可能な場合 現実には存在していないものを遺贈するなど
4、遺言内容が公序良俗に反する場合
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