ひとり暮らしの寂しさから、ペットを飼う高齢者が増えています。子供たちが自立した実家に残される老母と犬1匹、という状況も珍しくありません。いくら「家族同然」といっても、もちろん相続人にはなれないペットに対して、自分の死後のためにできる準備はあるのでしょうか。東京永田町法律事務所代表の長谷川裕雅さんに、教えていただきました。

かわいい愛犬を遺して死んでしまったら……
最悪の事態を防ぐために前もってできること

ペットも大事な家族の一員。もしもの時のため、できる準備はしてあげたい。

 ペットの世界も人間と同様、食べ物の充実(ペットフードの改良)や医療技術の進歩により、長寿化が進んでいるようです。老老介護ではないですが、老犬ホームに犬を預ける人の中には、自分自身も高齢化して犬の面倒をみきれなくなった人もいます。他に面倒をみてくれる人を見つけられず、先に自分が死んでしまえば、愛犬は保健所で殺処分されることになりかねません。それではあまりにかわいそうだ、と思った高齢の飼い主が、施設を利用しているようです。

もちろん遺産の相続はできません

 ところで、ペットはいくら「家族同然」といっても、もちろん相続人にはなれません。上記の老犬ホームのような施設が身近にあれば良いのですが、自分の死後のペットの世話に悩む独り暮らしの高齢者も、当然に出てきます。
 一番良いのは、自分の死後にペットを引き取ってくれる知人などを見つけ、頼んでおくことでしょう。そして、遺言の中で「Aさんに愛犬ポチの飼育を依頼します」と記しておくのです。ただでお願いするわけにいかない場合は、「そのための費用と謝礼として、私の○○銀行△△支店の預金から金500万円をAさんに遺贈します」と定めておく方法があります。実際にAさんがどこまでペットの面倒をみられるかは未知数ですが、信頼できる人が見つかれば、遺言者は安心して黄泉の国へ旅立つことができるでしょう。

 しかしながら、負担付遺贈にも限界があります。まず、遺贈を受けた人がそれを放棄することもあります。上記のケースで言えば、Aさんが「やっぱり私は500万円もらっても、ポチを飼えない」と断る可能性があるのです。500万円という遺贈額が相続財産に占める割合があまりにも大きい場合、相続人が遺言の内容にかかわらず、最低限受け取ることができる権利を主張(遺留分減殺請求)してくる場合があります。
 独居の高齢者の場合は、配偶者が既にいないことが多いでしょうが、遠くで別居している子供たちがこの権利を主張してくるかもしれません。遺留分が裁判で認められた結果、Aさんに渡るはずの500万円が残らなかった場合、Aさんとしても約束が違うということになり、犬の飼育をしてくれないかもしれません。

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