ひと口に「旬」といっても、味覚の旬と漁獲の旬のふた通りの考え方がある。おいしい時期と流通する時期は必ずしも一致するわけではない。『一個人』2017年6月号では、そんな魚の旬を詳しく紹介する。

◆魚にはふた通りの旬がある

ウナギといえば「土用の丑の日」、夏が旬だと思いがちだが……(写真:photolibrary

 魚の旬を考える際、ポイントのひとつとなるのが産卵期。“魚のプロ”、ぼうずコンニャクこと藤原昌高さんは次のように話す。
「産卵前の魚は、栄養を蓄えようと食欲が旺盛になります。丸々と太って身に脂が乗るので、非常においしいんです。逆に、産卵後はエネルギーを使い果たしてしまうので、身に脂が乗らず味が落ちます」。
 もうひとつのポイントは、量が多く出回るとき。
「難しいのは、魚によっては漁獲量が多い時期とおいしい時期が必ずしも一致するわけではないということ。とはいえ、たくさん獲れるということは、それだけ多く流通するので、ひとつの旬だと考えるべきでしょう」。

◆春から初夏にかけて多くの魚が産卵期を迎える

 まず、春が旬の魚だが、この時期は多くの魚が産卵期を迎える。マダイやサワラなどが、これに相当する。
 また、春には浅場の水温が上がり、プランクトンなどの生物が活発化し、多くの生き物が産卵する。稚魚を捕食する大型魚もおいしくなってくる。春から初夏にかけて産卵期を迎えるアサリやハマグリのような貝類も、プランクトンなどを食べて身が大きくなる。
「貝類の多くは産卵期が春から初夏なので、春が旬なものが多いですね」。

 水温が上がる夏は、魚の動きも活発化する。夏に旬を迎える魚は夏から秋にかけてが産卵期。ヒラマサやカンパチに脂が乗り、キスなど本来上品な白身もほどよく脂が乗る。
 また、夏といえばウナギ。栄養価が高く、夏バテ防止に効果があるとされているが、本当の旬は夏ではないという。
「天然ものの旬は実は秋。利根川などで獲れるボッカと呼ばれる大ウナギは天然ものより脂が乗ります。夏に流通しているのは、土用の丑の日に合わせた養殖ものです」。