自律神経研究の第一人者である小林弘幸氏。好評の最新刊『自律神経が整えば休まなくても絶好調』(ベスト新書)では日本人の休息法にある勘違いを指摘する。順天堂大学医学部教授として患者さんの治療にあたるだけでなく、プロスポーツ選手や一流アーティストのコンディショニングにも関わる超多忙な、小林先生に聞く本当の「休み方」とは?

重症化してからでは気づきにくい

──ストレスや自律神経の乱れは、とても怖いということはわかりました。しかし、その渦中にある人は、案外、自覚に乏しいということはありませんか?

 そうなんです。だからこそ、みなさん重症化させてしまうんですね。

 ストレスは、さまざまな形で私たちの心身をむしばみますが、途中でそれに気づきにくいのが厄介なところです。というよりもむしろ、「気づけなくなっている」と表現したほうが正解でしょう。

 いま、過労を苦にした自殺が問題になっていますね。自ら死を選んでしまった人について、「死ぬくらいなら会社を辞めればよかったのに」とたいていの人は単純に考えます。しかし、本人は、もはやそういう判断もきかなくなっているのです。

 こういう状態になっていると、非常に危険です。

──なにか、気づくべき「シグナル」のようなものはありますか?

 これね、実は私も体験したことなのですよ。

 医者になったばかりの頃の私は、いまにも増して仕事大好き人間でした。まだ若かったから、徹夜もへっちゃら。寝る時間を惜しんでがむしゃらに働きました。

 ただ、いまから考えると、風邪をひきやすく、頭痛にも悩まされていたから、体はSOSを出していたんでしょう。でも、気づかなかった。

 ところが、相変わらずフル回転して一週間を終えた日曜日の夕方に、テレビから流れる「サザエさん」のテーマソングを耳にしていたら、なんとも言えない気分に襲われてしまったんです。

 表現できない、とてつもなく暗い気分。かつて味わったことのないもので、体もだるくなって、動けなくなっちゃった。

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