あのジョン・レノンが靖国神社を参拝していたと聞いたら驚くだろうか。
「イマジン」に描かれている世界観は、神道の世界観と非常に似ているのである。
ジョンの妻、オノヨーコの従弟であり、外交評論家の加瀬英明氏から話を聞いた。
ジョンはヨーコとともに、靖国神社を参拝した
二人が参拝した靖国神社 

 私はジョンが、従姉の小野洋子〝オノ・ヨーコ〟の夫だったから、親しくなった。小野は、私の母の旧姓である。 

 私がヨーコの一族のなかで、ジョンがはじめて会った者だったから、出会った時からすぐに打ち解けた。
 ジョンとニューヨークや、東京で会って、マンハッタンの上空でUFOを見たとか、銀の棒を三本組み立てて、ピラミッドに見立てて、その下に野菜や、肉や、タバコを置くと、「ピラミッド・パワー」によって味がよくなるといった、他愛のないことを、よく話題にした。
 宗教や、芸術についても論じた。私は先の戦争は、日本がアメリカによって強いられて、自存自衛のために、やむなく戦ったものだったと、話した。
 ジョンはヨーコとともに、ベトナム反戦運動の先頭に立っていたから、アメリカが他国に無法に戦争を強いることと、二重映しになったのだろう。
 ジョンは、限りなく優しい人だった。私はこれほど優しい心をもった人と、親しくしたことがない。

 ジョンは、日本のよき理解者だった。そして、神道に深く魅せられるようになった。
 ジョンが、作詞作曲した『イマジン』が、全世界の若者の心をとらえて、大ヒットした。
 ヨーコと二人で書いたものだったが、一神教を否定していた。「天国も、地獄もないものと、想像してごらん」「宗教がなくなれば、全世界が平和になる」という歌詞のために、キリスト教会から、強い反撥を招いた。

 私はジョンに、神道には空のどこか高いところに天国があって、大地の深い底のほうに地獄があるという、突飛な発想がないし、私たちにとっては、山や、森や、川や、海や、現世のすべてが天国で、人もその一部だから、自然は崇(あが)めるものであって、汚(けが)したり壊してはならないのだと、話した。
 私は神道について説明した時に、イギリスの子どもだったら誰でも知っている『クマのプーさん』を、例としてあげた。
 小さなクマのプーは、ウィニー・ザ・プーとして知られている。さまざまな動物が棲んでいる、イギリスの森を舞台にした、童話の主人公だ。プーは森のなかで、他の動物たちと一緒になって冒険したり、仲間たちと楽しい日々を送っている。
 森には、教会もない。プーと仲間たちにとって、森が天国である。
〃プーの森〃では、動物たちもみな平等だ。まるで、神道の杜のようだ。日本人にとっては、動物も、魚介類も、虫も、草木も、すべて仲間である。

イマジンは神道の世界を歌っている!?

 ジョンはヨーコとともに、伊勢神宮も参拝している。
 私がジョンに、キリスト教の「愛」が無条件ではないのに対して、日本の「和」はすべてを包み込むといったら、頷(うなず)いた。
 ジョンは週に何回か、日本語学校に通って、日本語を勉強していたが、口癖のように「『オカゲサマ』が、世界のなかでもっとも美しい言葉だ」「このように素晴らしい言葉は、他にない」と、いった。
 ノートに学んだ日本語を、ローマ字で書き込んだのに添えて、それぞれ、ユーモラスなペン画が描かれていた。私が褒めると、つぎに会った時に、黒い革表紙をつけて、「フォア・ディア・カズン・ヒデ」「ジョン」と署名して、贈ってくれた。
 私は『イマジン』は、神道の世界を歌ったものだと思う。
いま、世界は宗教対立によって、血を血で洗う抗争が絶えないが、神道の心があまねくひろまれば、人類が平和に共存できるはずである。

 ある時、私が日本文化について講演をした時に、ジョンとヨーコが靖国神社を参拝したと述べたところ、若い女性から「ウッソー」といわれた。
 私が「二人が社頭で撮った写真がありますよ」と答えると、不満げな表情で、「何かの間違いでしよう」といった。
 写真は、二人が靖国神社を詣でた時に、AP通信が社頭で撮ったものである。このころのジョンは、まだ長髪だった。