名古屋めしの東京進出がひかえめなのはなぜなのか。清水義範著『日本の異界 名古屋』(ベスト新書)で著者はこう分析する。
 
 

◆大々的には東京進出しない名古屋めし

 名古屋めしが話題になり、東京でも注目されているのだから、これが名古屋を大きくアピールする突破口になるのではないか、と期待する人々がいる。食べ物で名古屋に注目してもらおう、というわけだ。

 過去にも、名古屋めしの東京進出はあった。それは2005年の愛知万博の頃だ。手羽先の「世界の山ちゃん」や、みそかつの「矢場とん」が東京に進出している。

 そして、去年あたりがその第2次ブームだそうで、2016年の4月にあんかけスパゲティの「ヨコイ」が六本木に出店、8月に台湾ラーメンの「味仙」が神田に出店している。

 しかし、名古屋めしの東京進出はどこかおずおずしていて、控え目なのだ。ドーンとチェーン展開して大ブームになってやろう、というような迫力がない。

 例外は小倉トーストも有名な「コメダ珈琲店」で、ここは2003年に関東第1号店を横浜に出店して以来、今や44都道府県に約740店を展開している。こういうやり方こそ全国展開というものだ。喫茶店といえばコメダ、というくらいに勝負をかけている感じがする。

 ところがそれ以外の名古屋めしは、腰の引けた進出のしかたしかしない。話題になっているそうだから、とりあえず一店だけ出店してみるか、という感じなのである。そして、3年ぐらいやってパッとしなかったら撤退すりゃいいんだから、なんて思っているみたいなふうなのだ。

 名古屋の慎重経営が、ここでは臆病経営になっているのだ。もっとガーンと進出してくればいいのに、という気がする。

 と言うか、そもそも、名古屋のものが東京でウケるなんてことはないんじゃないか、と思っているのかもしれない。名古屋では順調にビジネスできているのだから、それでいいじゃないか。東京へ進出したって、そううまくはいかないんじゃないか、とマイナスにばかり考えるのだ。

 名古屋はそこだけで一つの世界として完結しているということを指摘したが、味のビジネスも、名古屋だけでうまくやっていければいいと閉じこもっているのではないだろうか。

 トヨタ自動車の例を思い出すまでもなく、ほかの機械製造業などは、名古屋発で全国展開している企業はいっぱいある。LIXILの便座は日本中のものだし、マスプロ・アンテナも、パロマのガスコンロも、日本中で使われている。

 だが、ことが食べ物となると、名古屋以外で受け入れられるかなあ、と弱気なのだ。あんまり無謀な冒険はせず、名古屋だけでやっていければいいじゃないかと考えてしまう。だから、思い切って東京進出してみても、慎重すぎる程慎重に一店だけ出すのだ。つまり、心の奥底で東京を信用していないのかもしれない。いくら話題になっていたって、進出して成功することはないんじゃないかと疑っているのだ。

小倉トーストの「小倉」のルーツや、天むすのルーツなども清水義範著『日本の異界 名古屋』(ベスト新書)で紹介されている。