テレビショッピングでの独特な話術がよく知られている、ジャパネットたかた創業者の髙田明さん。相手に話が「伝わる」にはどうすればよいのか、ズバリお聞きしました。

――「伝わる」ために重要なテクニックはありますか。

 技術はもちろん重要です。前回「伝わる」ために熱意が大事だと言いましたけれど、もうひとつ大切なのは表情などの非言語表現です。

 人間が他の動物と違うところは、言葉を発すること、とはよく言いますけれど、もうひとつあるんです。表情を出せること。どんなに賢い犬でも喜怒哀楽までは顔に出ないですよね。

 それに同じことを言っていても、怒った顔で言う人と、笑った顔で言う人がいれば「伝わり方」は変わってきます。そのくらい表情というのは伝えていくうえでも本当に大事です。

 わたしは社員に指導をする際に、顔の表情やしゃべるときの手の動き、しぐさというものを厳しく伝えます。前回お話した「伝わるかどうか」という視点で見ていますから、厳しいですよ。

 名優と言われる役者さんの演技はなぜ伝わるのか。何冊かそういう本を読んだりもしました。中でも特に共感したのが、世阿弥の記した『花鏡』と『風姿花伝』です。ご存じですよね、室町時代に活躍した観阿弥・世阿弥の世阿弥です。「能」を広めた人ですが、この本の中に、能役者が一流になるために必要なことが書かれています。はじめて読んだときはびっくりしました。感覚的に私がやっていたことと、たくさんの共通点があったからです。650年以上の時間が経っていますが、伝統文化には今につながるものがたくさんあるんですね。これについては改めてお話ししたいと思います(●回)。

 さて、表情が大事というお話でした。
 取材でこう言われたことがあります。「夫婦のコミュニケーションも難しいですよね」。わたしは「それは大丈夫ですよ、表情を出してください」と言いました。

 表情で、人の印象は変わるんです。人は、1、2秒でその人を見抜いて、どういう人か印象を持ってしまうそうですよ。ですから表情はとても重要なんです。そして、前回お話した「情熱」は表情に表れるんです。

 最近ちょっと危惧しているのは、表情を出す力が弱くなってきているのではないか、ということです。スマートフォンの普及などもあって、対人のコミュニケーションが減ってきています。言葉を出さないやり取りが増えてしまうと表情筋が弱まってしまいます。表情が豊かかどうかというのはとても大事なことなんです。子どもは表情が豊かですよね。だから伝わります。何を考えているかよく分かる。

 子どもたちがスマートフォンばかりに時間を使っていると、社会に出たときに言葉が足りなくなってしまうのではないかと、ちょっと心配ですね。じゃあなんでジャパネットたかたはスマートフォンを売っているんだって言われそうですけど、スマートフォンにはいいところもたくさんありますからね(笑)。

明日の第十八回の質問は、「Q18.社員に何かを伝える際の方法を教えてください」です。