各地で夏の甲子園に向けた戦いが始まっている。注目は福島県大会。11年連続甲子園出場という偉業を目指す高校がある。聖光学院ーーその挑戦を3回にわたっておくる。第3回は「“強くなれれた”理由」。

個人主義の集まりが見つけた目標

 劇的なサヨナラ勝利で、夏の福島で戦後最長記録を更新する11連覇を決めた。
 決勝戦のスコアは5-4。春に18-3と大勝したいわき光洋の猛追を振り切っての勝利は、このひと言に尽きる。

 やっぱり、聖光学院は強かった――。

「去年のチームは自覚がある選手が多かったけど、今年の選手はバラバラ。もう、どうしようもない(笑)。でも、だからこそ面白い。『これからどんなチームになっていくんだろう』って楽しみはあるよね」

 斎藤智也監督は、夏の大会前にそう漏らした。まるで「でもね、最後にはこいつら、やるよ」と期待感をにじませるように。
 その暗示は実現した。
 監督に「バラバラ」と評されたチームが、結束力を示した背景には、選手たちが掲げたスローガンがあった。

 他喜力。

 試合で三塁ベースコーチを務める、副主将の伊達駿介が言う。

「僕たち54期生はいろんな人に迷惑をかけてきました。自分たちが『他喜力』を心がけて、お世話になったり、迷惑をかけてしまった人たちを喜んでもらえるような試合をしなくてはいけないと思っています」

 他喜力とは選手たちが導き出した造語である。その名の通り「多くの人間を喜ばせる力を出す」と表現してもいい。しかし、彼らのこれまでの道のりを踏まえれば、「他人を思い、喜ばせるために自分は何をしなければならないのか? その問いと真摯に向き合い、力を養い、発揮する」と補足することもできる。

 今年の3年生は、例年以上に「個人主義」の集まりだった。

次のページ 劇薬となった「敗戦」