天狗とお多福が子作りを実演!? 奈良県に今も伝わる豊作祈願の祭りを紹介。

古式ゆかしくエロチック、「性」と「生」に関する「おんだ祭り」

時季:例年2月第1日曜
場所:奈良県高市郡明日香村、飛鳥坐神社

 

 天狗とお多福が神官の前に並んで座っている。結婚式なのだ。

 すると天狗がやおら立ち上がり、股間に竹筒を押しつけ、何度もしつこく回転させる。そして、竹筒に酒を注いだかと思うと、そのまま目の前に置かれた山盛り飯に酒をぶっかけてしまう。何を意味しているかは想像していただくしかないが、これを「汁かけの儀」という。

 さて、本番はここからである。お多福が寝転がり、その上に天狗がのしかかり、しきりに腰を振り出すのである。さらに、不気味な仮面をかぶった翁が現れ、天狗の腰を押したり、辺りを走り回ったりする。これはやきもちを焼いているのか、それとも乱交を表現しているのか。 

 やがて、天狗の激しい腰使いが止まる。「コト」が終わったのだ。
 すると、お多福はよろめきながら立ち上がり、どこからか紙を持ち出す。してその紙で股間を拭いて、観客に投げつけるのである。これを「拭くの紙」といい、その夜にベッドで使うと、子宝に恵まれるらしい。
 あまりに露骨すぎる祭りだが、昔の日本人は、農作物の繁殖と人間の生殖を同じものと考えていた。だから、豊作祈願の祭りには、しばしばエロチックな事件が起こるのだ。今見ると猥褻なものにしか見えないこの祭りは、実は非常に日本的な正しい豊作祈願の祭りなのだろう。

『一個人』2017年8月号より構成〉