「重ね合わせるのです――いつかの僕と、ここにいる僕を」
近年「コップのフチ子」や「バカドリル」で話題のクリエイター・タナカカツキが1980年代に著した処女作の漫画「逆光の頃」が小林啓一監督により映画化される。
京都生まれ、京都育ちの17歳の主人公を演じるのは、監督とは「ぼんとリンちゃん」以来のタッグとなる注目の俳優・高杉真宙。
同級生(清水尋也)への憧れと別れ、幼馴染の少女(葵わかな)とのふれあいと初恋、不良(金子大地)との喧嘩や親(田中壮太郎)との関係など、
日常と非日常を行き来する一人の少年のゆらめきときらめきを詩的に描いたこの作品についての想いを聞いた。
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――まず、原作を読んだ感想はいかがでしたか?

高杉真宙(以下、高杉) 非常に独特だな~と思いました。漫画のセリフやモノローグがめちゃくちゃ詩的で、きれいな言い回しが多いんですよ(笑)。こんな風に表現できる高校生になりたいと思いました。

――演じる赤田孝豊への印象を教えてください。

高杉 わりと普通の子なんですけど、その普通が変なんです。まだまだいろいろな未来がある高校生という頃に、自分以外のいろんなものがすごく明るく見えて、他の人がすごくキラキラして見えるっていう、この子のそんな目線自体が面白くて、なのに自分を普通だと思っていて…。だからひたすら受け身ですし、主人公なのに目立ちすぎず、目立たなすぎずという塩梅が難しかったんですけど、孝豊というキャラクターができていくにつれて、人の波に乗っていく感じがして面白かったですね。周りの人たちに助けられて作られていくキャラクターだと思いました。

――2年に及ぶ京都ロケでの撮影はいかがでしたか?

高杉 純粋にただただ楽しかったです(笑)。いろんなところに連れて行っていただいて、たくさんご飯を食べました。地方ロケで出歩くのは嫌いではなかったですけど、観光したりしたのはこの映画の京都からはじまったのかもしれません。京都っていっぱい観光地があって、それももちろん楽しかったんですけど、散歩しているだけですごく趣のある家が出てきて、街自体に風情があるんですよね。日本を代表する街なのに、どこか他の国みたいな異世界感もあって、ただ裏路地に入っていくだけで冒険しているようで。歩いていくうちに京都という街がどんどんどんどん自分の中に落とし込まれていく感じがして、すごく楽しかったです。

――独特の撮影スタイルで知られる小林(啓一)監督とは、「ぼんとリンちゃん」(2014)以来、2度目のタッグになりますね。

高杉 4年ぶりかな? 監督に成長した姿を見せられるかなと思ったんですけど、やっぱりなかなか難しくて…。結局何回も何回も挑戦してっていう感じでした。常に心が折れて、立ち向かっていかなきゃいけない現場っていうのが…もちろんどんな現場も絶対1回は折れるんですよ。でも、毎日心が折れて頑張らなきゃみたいな感じになるのは、本当に小林監督の現場ならではというか…(笑)。監督ご自身はすごく優しいんですけど、課題の多い現場でした。

――「ぼんとリンちゃん」ではリハーサルに数ヶ月をかけて役の人物像を染み込ませ、出来上がった後に撮り直すなど、役者自身のドキュメンタリー要素を重視する監督という印象です。

高杉 そうですね、演技としては一番難しいところだなって思います。何か、変な人って作りやすいんですけど、普通の子、普通の会話って難しいんですよね。それをナチュラルにさらに見せなくちゃいけないっていうのがいつも大変だなって思います。かといって僕自身の素を見せるわけではないので、そこが難しくて戸惑う部分ではありますね。

――共演者についての印象を教えてください。

高杉 まず、(清水)尋也は今まで何度かご一緒させていただいていて、役が毎回、交互に変化してて面白いんですよ。最初は尋也がいじめっ子、僕がいじめられっ子で始まって(ドラマ「高校入試」2012年)、次は僕がヤンキーで尋也がいじめられっ子(映画「渇き。」2014年)。今回は尋也がイカついバンドの男の子で、今回僕は普通の子でってみたいな、そういう交代交代な感じがすごく面白くて。「次はどんな役で会うんだろう」っていう、本当に面白い関係です。3回目の今回は久々で、しかもガッツリやれてうれしかったですね~。この子は本当に色気があふれ出ていて。何か、ただひたすらにうらやましいです。孝豊が尋也の演じる公平に対して「かっこいいな」と思っている気持ちは、自分自身と重ね合わせられるところがありますね。

――高杉さんは清水さんの色気を自分は持てないと?

高杉 全然持てないですね~。すごくいいです、すごく。映像で見ても、リアルで見てても、素敵な雰囲気で。それでいて、ガツガツと燃えているものがあってっていう。何ですかね、すごく不思議なんですよ。お互いすごい仲いいんですけど、そんなにいっぱいしゃべるわけじゃなくて、でも何か一緒にいて居心地が悪くなる感じがないんです全然。だから面白いんですよね。

――先日18歳になったばかりの清水さんも、間もなく21歳になる高杉さんも、作品によって年齢の印象が自在だから、「この子」って言われるとちょっとびっくりします(笑)。

高杉 あ~、尋也はすごい大人っぽいですからね。でも「あの子」っていうのは尋也に限ったことじゃなくて…僕、何か最近、人とかものとか動物を「あの子」っていうことが好きみたいなんですよ(笑)。

――そうなんですね。葵わかなさんとは?

高杉 今回が「初めまして」だったんですけど、演技していてめちゃくちゃ安心していられる感じといいますか、ポンポンポンポンって行ける感じがして楽しかったですね。ご本人の性格についてそこまで深くは分からないですけど、話しやすくて、面白くて。何て言ったらきれいなんだろうな…京都が似合う子だなってすごく思います。演技だったのか、ご本人の要素なのかはわからないですけど、「京都にいて不思議じゃない、和が似合う女の子だな」ってすごい思って、初めて会って演技してちょっと経った頃に「京都が似合いますね」って言っちゃいましたもん直接(笑)。「京都好きだからうれしい」ってリアクションでを頂きましたけど、でもまた別の作品で出会ったら全然違うんでしょうね。「東京似合うね」って言ってるのかもしれないです(笑)。

――出来上がった映像を見ての感想は?

高杉 まだラッシュの段階でしか観られてないんですが(5月取材時)、ただひたすら、この孝豊っていう子に嫉妬しましたね、うらやましいなって思いました。京都に生まれて、こんな風にいろんな出会いがあって…。何か「京都に生まれたかったな~」って思いながら見ちゃいました。自分が演じてるんですけど、自分を見ている感じが本当にしなくて。自分には、一っっっっっっ切こんなことがなかったので(笑)。こんな風に高校生活を過ごしたかったなと思いました。

――タイトル「逆光の頃」が印象的ですけど、高杉さんにとってはどんな意味がありますか?

高杉 その…他の人が眩しいっていう「逆光」だと思ってるんです、僕は。自分はこんなに普通なのに、夢に向かっていく公平をはじめとするいろんな人に対しての“眩しい感じ”が、この「逆光の頃」の意味だと思っているんですけど、僕も、の人に対して羨ましいっと思ったりだとか、嫉妬しちゃったりとか、劣等感を感じたりすることが多いんですよ。他の人に憧れがある、そういう眩しい感じっていうのがわりと、孝豊と僕は似てるなとは思います。

――それは思春期ならではの焦りと似ていると思うんですが…高杉さんは思春期真っ只中ということですか?

高杉 そうですね。もちろん、もう絶対思春期だと思います(笑)。

――今取材させていただいている大人っぽい高杉さんと、この作品の中の高杉さんの印象がすごく違いますが、撮影時を振り返るといかがですか?

高杉 何ていうんですかね…この時の自分にしかできなかった役なんだろうなっていう気がすごくしますね。何かもう、ギリギリだったなっていう感じがしました。分かんないです、今やってみたらまた違う感じで「逆光の頃」にハマるのかもしれないですけど、でも、この時の僕…でよかったんじゃないかなっていうのもありますね。

――映画のコピーとなっている「重ね合わせるのです。いつかの僕と――ここにいる僕を」じゃないですけど、こうしてそのときそのときが映像に残るのは、年齢順じゃないアルバムみたいでいいですね。

高杉 何か不思議ですよね(笑)。今回の写真集(セカンド写真集『20/7』)もそうなんですけど、どんどんどんどん、自分の印象が自分で見てても変わっていく感じが面白くて。「逆光の頃」は特に、その感じが強いです。


■Profile
高杉真宙/たかすぎまひろ
1996年7月4日生まれ、福岡県出身。2009年、舞台『エブリ リトル シング09』で俳優デビュー。2012年に『カルテット!』で映画初主演を飾る。以降、映画『渇き。』『ぼんとリンちゃん』、ドラマ『35歳の高校生』『仮面ライダー鎧武/ガイム』『明日もきっと、おいしいご飯〜銀のスプーン〜』『カッコウの卵は誰のもの』、舞台『TRUMP』『闇狩人』など数多くの作品に出演。2017年は映画『PとJK』『ReLIFE リライフ』『想影』(主演)が公開、さらに『逆光の頃』(7月8日/主演)、『トリガール!』(9月1日)、『散歩する侵略者』(9月9日)が公開待機中。2018年には『プリンシパル~恋する私はヒロインですか?~』も公開予定。