日本全国に数多ある名字に高校生の時から興味を持ち、研究を始めた高信幸男さん。自身が全国を行脚し出会ってきた珍名とそれにまつわるエピソードを紹介する。

 日本の名字の中には、魚の名前の名字もたくさんあるが、今回は「土用の丑」の日の配信であることから鰻(うなぎ)という名字を紹介したい。

 

 日本では、昔からスタミナ源として鰻が食されてきた。特に、暑い夏の中でも土用の頃は体力が最も消耗することから、栄養源として鰻が食されてきた歴史がある。馴染みのある魚なので誰でも知っているが、実際に名字となると驚いてしまう。
 元来、名字の由来は、地名や職業が関係していることが多いが、鰻の名字については地名から生まれたものである。鹿児島県には鰻池という池がある。そこには昔から大きな鰻が住んでいるといわれ、その池周辺の地区の地名も鰻である。つまり、鰻さんはもともと鰻漁をしていて鰻になったのではなく、住んでいる地区の地名を取って鰻を名字にしたのである。

 現在、鰻さんは全国で数件の貴重な名字であるが、かつてはもっと多くの鰻姓の家があった。しかし、地名も池の名前も名字も全てが鰻では区別がつかないとのことで、名字を変えた家も少なくなかった。日本鰻が絶滅の危機にあるが、名字の中でも数少なくなり貴重なものとなっている。いつまでも鰻の名字を守り続けて欲しいものである。 

 山梨県には、鰻池という名字がある。その地域には鰻池の地名や池もないことから、もしかすると鰻池さんの名字のルーツも、鰻さんと同じ鹿児島県の鰻池と推測される。 ちなみに、鰻といえば「土用」の「丑の日」を連想させるが、土用(どよう)さんという名字も石川県に存在する。

〈『一個人8月号』より構成〉