1989年の今日、日本は「しんかい6500」で最大潜航深度6527メートルという世界記録を達成した。2012年まで破られなかったこの記録に至った技術には、戦前の日本軍が関係しているという。新刊『「日本軍」はなぜ世界から尊敬されているのか』を上梓した、熊谷充晃氏が語る。

「日本軍」の“遺産”を受け継いで……30年前に極限まで到達したテクノロジー

 

 1989年の今日、日本はひとつの新記録を樹立した。

 国内の最先端技術を結集して建造された有人潜水調査船「しんかい6500」が、造船所による公式試運転で最大潜航深度6527メートルという世界記録を達成したのだ。この記録が2012年まで破られなかったことを考えると、驚異的な偉業だったといえる。潜水調査船の設計や建造に必要な能力を、日本は「しんかい6500」の時点で、ほぼ限界にまで高めていたということだからだ。

 現在も堂々の世界第2位(1位は中国の7020メートル)だが、実はこれより深度を伸ばそうとすると、今までになかった技術的な課題が数多く姿を現すという未知の領域に突入してしまうそうだ。

 2007年3月に記念すべき1000回目の潜航を果たし、2012年3月に終えた建造以来最大の大改装を経て、2017年現在も現役で稼働している「しんかい6500」。用途は世界中の海で海底の地形や地質、深海生物の調査などをおこなうことだが、たびたび学会や世間を驚かせる新発見もしてきた。最近では東日本大震災の震源海域で大きな亀裂を確認し撮影したりもしている。