「経済」がわかれば、「戦争」がわかる!
戦後70年。日本はなぜアメリカと戦うことになったのか? この疑問に経済的視点で答えた注目作がついに発売!(2015年1月24日全国書店等で販売開始!)
『経済で読み解く 大東亜戦争』の著者・上念司先生に、「経済」と「戦争」の関係性、そして「今後の日本経済」について語ってもらった。

Q1.本書『経済で読み解く 大東亜戦争』を執筆しようと思った動機をお聞かせください。

 

上念 もともと、先の大戦の「開戦動機を問う」というのが僕のライフワークでした。「なぜ結果が見えていたにもかかわらず、アメリカと戦争をしたのか?」が理解できなかったからです。

 しかし、調べれば調べるほど、日本がドイツやイタリアと組んで、アメリカやイギリスと戦争をする理由ってないんですよね。行きがかり上ドイツとイタリアと組みましたが、社会体制は違うし、共同作戦もほとんどしていないし、なんのために「日独伊三国同盟」をしたのかがわからない。その「わからない」を追って、様々な事例を研究し続けてきました。

 もうひとつは、日本経済の「平成不況」について調べているうちに、『昭和恐慌の研究』(岩田規久男編著、東洋経済新報社)という名著に行き当たり、「金本位制」の欠陥がいかに世界経済に大きなダメージを与えたかということに気がついたんです。そこから、さらに近現代史というものを経済学の視点で学び直しました。

 そして、いろいろなことがわかりました。例えば、「戦前にも自由主義者がいた。しかもその人たちのほうがむしろメインだった。そこでは、自由な論争が行われていた」などです。でも、ここでまた疑問が生まれます。

「戦前はある意味、いま以上に自由な世の中だった。それなのに、なぜ戦時統制のような変な世の中になってしまったのか?」と……。

 これらの疑問に答えるために、本書を執筆しました。

Q2.経済評論家である上念先生が、近現代史に造詣があることを意外に思う人もいるかもしれませんね。

上念 経済学は「実験」ができませんから、過去に何があったのかという「歴史」を学ぶことが大切です。

 例えば、「リフレ政策をやったら何が起こるか」というのは、過去のデータを参考に、現代に当てはめて計算する。そして、「将来、○○の影響が出る」という解を導き出す。そのように歴史を学びながら、確かさ、正しさを証明していくのが経済学のやり方です。経済学は、「実証的」なんです。

Q3.戦争史を経済的視点からひも解くというのは、あまり先例のない新たな試みだったかと思います。ずばり、経済的視点から大東亜戦争を語る上でのキーワードはなんでしょうか?

上念 経済的視点から大東亜戦争を語る上でのキーワード、これはもう間違いなく「金本位制」です。金本位制の要は「デフレレジーム」だというところがポイントになると思います。これは本書に詳しく書いてあるので、ぜひ読んでいただければと思います。

Q4.サブタイトルにある「ジオ・エコノミクス」という言葉を初めて聞く方もいると思うのですが、わかりやすく説明していただけますか?

上念 「ジオ・エコノミクス」とは、「地政経済学」のことです。地政学というのは基本的には「自国は周辺国に包囲されている」として、その中で「自分の生存権をいかに守るか」「そのためにはどのような戦略があるか」ということを研究する学問です。外交交渉や戦争も手段のひとつですが、主に経済政策を手段として考えるというのが「ジオ・エコノミクス」です。

 ところが、相手国をコントロールする道具として経済政策を使うと、当初意図したのとは全然違う結果や、下手をすると反対の結果が出ることもよくあります。これを、戦略研究家であり実際に戦略家でもある、アメリカのブッシュ大統領のアドバイザーだったエドワード・ルトワックは、「逆説の論理」と呼んでいます。

 例えば、日本は真珠湾を攻撃し勝利しましたが、アメリカ人の復讐心に火をつけてしまいました。真珠湾攻撃は生存権を守る作戦であり、かつ戦術的には成功した作戦であったにもかかわらず、結果的に日本を存亡の危機にまで追い込んでしまったのです。同じように、経済においても「逆説の論理」が随所で働きます。

 経済を手段として使って相手国をコントロールしようとしても、意図したのとは全然違う方向に行ってしまってしまう……。これが「ジオ・エコノミクス」を理解する上で、重要な視点だと思います。