甲子園は、昨夏準優勝校・北海、そして優勝校の作新学院が初戦で姿を消した。『スコアブックは知っている』などの著書があり、43季連続で甲子園を取材する楊順行氏の寄稿。

古豪・名将が褒めちぎった相手の一発

「2本のホームランに尽きます。先取点を取り追加点、と試合の流れはよかった。ただ、とくに7回、2点勝ち越したあとの逆転の3ラン……高校生の右打者であそこまで飛ばされたら、ほめるしかないですね」
 第5日第3試合。神戸国際大付(兵庫)に逆転負けした北海(南北海道)・平川敦監督は、相手・谷口嘉紀の2打席連続ホームラン――ことに、外角の球を右翼ポールぎりぎりに放り込んだ2本目――に脱帽するしかない。北海打線も1、9回以外は毎回安打の11本と、チャンスはつかむがあと1本が出ず、4対5。昨年の準優勝校が、初戦(2回戦)で姿を消した。
 夏38回目の出場は全国最多の古豪・北海。
 昨年は1928年以来88年ぶり(当時は北海中)のベスト4に進出すると、頂点には届かなかったものの、夏は初めての決勝進出を果たしている(春は63年に準優勝)。だが昨年までは、94年のベスト8を最後に初戦敗退が5回続いていた。つまり、夏の白星自体が22年ぶりで、98年に就任した平川監督にとっては、夏初勝利だったわけだ。
「監督就任2年目の99年夏に出場しましたが、そこから苦しかった。駒苫(駒大苫小牧高)全盛の時代もあって、8年間は春夏ともに甲子園から遠ざかったんです。甲子園には出て当たり前だった古豪だけに、毎年のように私の知らないところで辞任の噂が流れましたよ(笑)。でも、ガマンするしかありませんでした」
 古豪の空白の8年の間には、駒大苫小牧が夏を連覇(2004~05年)。06年にも、早稲田実との引き分け再試合に敗れたものの、3連覇という偉業に手が届きかけていた。
 ちなみに、北海OBの若松勉さん(元ヤクルト)に一度聞いてみたことがある。母校がまだ成し遂げていない全国制覇を、駒苫が先に達成して悔しくはなかったですか……。
「いや、悔しさはなかったですね。北海道出身者として、"優勝してくれ"とホンネで思っていましたから。自分たちができなかったことを、よく達成してくれたという思いです」
 いかにも好人物の若松さんらしい。
【北海高校準優勝の裏側にあったもの――主将兼エース大西の回顧】