密教寺院といえば、大日如来を本尊としていることが多い。しかし真言宗御室派の総本山である仁和寺の本尊は阿弥陀如来だ。いったいそれはなぜなのだろうか―。

本尊に込められた父・光孝天皇への思い 

国宝「阿弥陀如来坐像」平安時代・仁和4年(888) 京都・仁和寺蔵

 仁和寺は真言宗御室(おむろ)派の総本山。平安時代に第58代光孝天皇の勅願によって着工され、第59代宇多天皇が父の遺志を継いで仁和4年(888)に完成させた。

 ところで真言密教では大日如来を本尊とすることが多いが、こちらの本尊は阿弥陀如来だ。しかし、この寺の文化財の管理を担当する金崎義真さんによれば、それはさほど珍しいことではないとのこと。「密教では大日如来を仏の世界の中心と考え、あらゆる仏が大日如来から派生すると考えるため、阿弥陀如来が本尊であっても何らおかしなことはないのです」。

 現在金堂に祀られる阿弥陀三尊像は江戸時代のもの。一方、創建時から伝わる阿弥陀三尊像は国宝で、境内にある霊宝館に安置されている。これは宇多天皇が父、光孝天皇の供養のために造らせたもので、極楽往生を祈願するため阿弥陀如来を本尊としたと考えられているのだ。