天皇家ゆかりの品が、多数収蔵されている正倉院。だが、貴重な収蔵品の数々にもかかわらず、これまで国宝に指定されてこなかった。いったいなぜなのか?(『一個人』2017年9月号より)

◆正倉院の美術品は皇室財産

 

 奈良・平安時代の中央や地方の官庁、寺院には、重要物品を納める正倉が設けられており、この正倉が何棟も集まる一郭が「正倉院」と呼ばれた。こうした正倉は各所に存在したが、現存するのは東大寺正倉院内の正倉1棟のみ。今では正倉院といえばこれを指す。

 正倉院には、聖武天皇と光明皇后ゆかりの品など、天平時代を中心とした多数の美術・工芸品が収蔵されている。これらの品は歴史的価値が高く、貴重なものだが、これまで国宝・重要文化財に指定されてこなかった。 
 というのも、正倉院御物は天皇家の所有物であり、戦前からの慣例で文化財保護法による国宝・重要文化財の指定対象外となっているから。皇室財産を管理するのは宮内庁であり、国宝を指定するのは文化庁で、そもそも所管が違うのだ。ただし、1997年には収蔵品を除く、正倉院正倉1棟が例外的に建築物として国宝に指定されている。 

 正倉1棟が国宝に指定された背景には、「古都奈良の文化財」がユネスコの世界遺産に指定されたことにある。世界遺産には、所在国の国内法で文化財に指定されていなければならないという条件があるので、正倉院が除外されそうになったのだ。この条件を満たすために、正倉院の建物が「正倉院正倉」として国宝に指定された。 

 校倉造の大規模な高床式倉庫である正倉院は、建築物としても歴史的価値が高い。 

『一個人』2017年9月号より構成〉