ノンフィクション作家、谷川彰英が名古屋をたどる。寺院の数が日本一多い愛知県。『名古屋地名の由来を歩く』(著・谷川彰英)より、名古屋の街並みの魅力を紹介する。

桶狭間を訪ねる

桶狭間古戦城趾の碑

「桶狭間(おけはざま)」というところが名古屋に入るのかどうかは、微妙なところである。名古屋市緑区には、「桶狭間北一〜二丁目」「桶狭間切戸(きりと)」「桶狭間清水山」「桶狭間神明(しんめい)」「桶狭間森前」といった町名がずらりと並んでいるが、名鉄名古屋本線の中京競馬場前駅(名古屋市緑区)から徒歩3分くらいで行ける「桶狭間古戦場伝説地」は豊明(とよあけ)市にある。実際の戦いは名古屋市ではなく豊明市で行われた可能性が高い。

 もともとこの地域は江戸時代から「桶狭間村」だったところで、その意味で「桶狭間」は由緒ある地名であった。明治26年(1893)に有松町と合併して大字になり、有松町は「有松」地区と「桶狭間」地区の二つのエリアを含むことになった。

 しかし、その「有松」は慶長13年(1608)に桶狭間村の支郷として設けられた経緯があり、もとは「桶狭間」の方が古い歴史を有した地名であった。