戦後民主主義のヒーローとしての信長の真実の姿は歪められている?真実の信長像を知ることで、新たな日本史の歴史観が構築される! 気鋭の保守の論客倉山満が挑む新境地! 絶賛発売中の『大間違いの織田信長』(KKベストセラーズ)を上梓した、倉山満氏が人間信長の魅力に迫る!

戦前に信長を評価したのは、たったの三人

 私が調べたところ、戦前に信長を評価した人物が三人います。

 一人目が田中義成(よしなり)という、東京帝国大学の教授です。著書の中では、『南北朝時代史』『足利時代史』『織田時代史』『豊臣時代史』(全て講談社学術文庫)と分けて書いていますが、信長がオリジナルで秀吉はそれを継いだだけ、という珍しい評価をしている方です。

 それから徳富(とくとみ)蘇峰(そほう)。戦時中は大日本言論報国会に関わり、「東条英機と徳富蘇峰には不敬罪が適用される」と陰口を叩かれた、論壇のドンと言われた人です。『近世日本国民史』という全百巻の本で明治維新を書きたかったらしく、明治維新を語るには徳川だ、徳川を語るには豊臣だ、豊臣を語るには織田だ、と織田信長から西郷隆盛が死ぬまでが描かれています。出だしの人はヒーローでいてくれないとウケが悪いので、とにかく信長をヒーロー扱いしています。

 三人目は、今井林太郎という一般にはまったく無名の学者です。戦前、戦中、戦後と一貫して信長を褒めていて、信長というのは実に革新的だと強調していました。

 この三人くらいです。

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