産んでも産まなくてもこれでよかったと思える人生のために。女として「自分が主語」の人生を楽しむためのヒントがある。34歳で子供が欲しくなり、40歳で不妊治療をやめたコラムニスト吉田潮氏の言葉を新刊『産まないことは「逃げ」ですか?』より紹介したい。

いわゆる震災婚

 震災後、彼はちょくちょく東京に来てくれた。有事の際に私がまったく使えない人間であることが露呈したからだ。寂しさと不安もあって、眠れない日もあった。そこで、また私の悪い癖、「子供が欲しい病」の発症である。

 ある程度は仕事で勉強していたので、不妊治療についてはそれなりに知っていた。知っていたつもりだった。40歳を超えると、たとえ体外受精でも妊娠率がガクンと下がること、数十万円はかかること、卵子がとれても受精卵になるとは限らないこと、人工授精よりも体外受精のほうが手っとり早いこと、不妊治療に非協力的な男がたくさんいるということ、そして不妊治療が原因で別れるカップルも実に多いなどなど。

 まずはひとりでクリニックへ行き、39 歳なのでスピード&効率優先主義であることを医者に伝えた。まだるっこしい検査をいくつも受けている時間的な余裕はないので、体外受精をしたいと。

 これは彼とも合意済みである。彼が不妊治療についてどこまで理解していたかはわからないが、ひととおりは電話で説明した。年齢を考えると、手っとり早く効率のよさそうな体外受精を受けたほうがいいと、プレゼンしたのだ。おそらく私の熱意ある、というか鬼気迫るプレゼンは迫力があったに違いない。彼に有無を言わせなかったのだと思う。そして、彼は限りなく優しい男なので、「やりたいんだったら協力するよ!」とひとつ返事だったのである。

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