7月27日発売、『焼酎一個人vol.1』より、新しい焼酎のスタイルを提案します。

芋焼酎の薩摩に比べて
焼酎の種類が多い宮崎

霧島酒造(都城市)では、霧島山から浸透して自然濾過された霧島裂罅(れっか)水で本格焼酎が造られている。写真は霧島ファクトリーガーデン内にある霧島裂罅(れっか)水の水汲み場。

 サツマ芋は土壌や気候を選ぶから、作れる土地が限られる。原料の芋は冬が越せないから、むかしは芋焼酎を造れない土地があった。長年、宮崎県内を飲み歩いている焼酎博士・田代学さんは言う。
「むかしは“二十三夜講”といって、月が出るまでは焼酎を飲んでいいという風習がありました。飲んでいいのは武士だけではなかったんです。だから、サツマ芋の採れない土地では、別の原料で焼酎を造りました」。

 県北の山間部では芋や米や麦が採れないから、そばなどの雑穀で造った。清酒文化が伝わった県北平野部(延岡市)では、戦後には香りの軽い甲類焼酎が広まった。
「県央以南は、もっぱら芋焼酎が造られました。そして熊本県境では、県北の高千穂町周辺ではそばなどの雑穀焼酎、県西のえびの市周辺は、米どころでもありましたので、芋に加えて米焼酎も造られていったのです」。

 ただ、と田代先生。
「それほどハッキリ分かれるわけではないんです。いまもその地域では好まれている、という程度のことで、宮崎では小さな蔵が個性豊かな焼酎を造っている、というのが現状ですね」。
 だから、薩摩は芋焼酎、大分は麦焼酎といった、宮崎では〇〇焼酎という明確な言い方ができないのだと。
「実は圧倒的にたくさん飲まれているのは、芋焼酎なんです」。

 40年近く前、昭和54年の宮崎国体のころから、国体のころからTVCMを流している霧島酒造の知名度は高い。
「だから、県内ではいまでも霧島の全県制覇の状態です」。
 全国展開する霧島酒造は、飲みやすさを追求して「黒霧島」「白霧島」を造った。が、
「やっぱり昔のままの、クセのある味がいい、という人も増えた。それで、宮崎限定の『本格焼酎 霧島』を出しています。宮崎各地にある個性的な芋焼酎は、単年度生産しかできない、小さな蔵が造っているんです」。
 地元で愛されてこその焼酎、ということの証しだろう。

「焼酎は安いし、食中に飲むものなんです。だから、ふだんは高い“幻の焼酎”は飲みません、特別なときだけですね」。
 と博士。焼酎だけではない、人も気取らず、でもバラエティに富んで個性的なのが、いかにも“宮崎”風だ。
 

~宮崎焼酎のココに注目!~

1 地域で異なる多彩な原料
 焼酎の原料となるサツマ芋はもとより、米や麦、そばや栗などの焼酎の原料が生産されている。宮崎焼酎の多様性の要因である。

2 県北はそば焼酎の発祥地
 そば焼酎で知られる雲海酒造は県北の五ヶ瀬町で創業。米や麦があまり採れない山間の地で生まれたのがそば焼酎だ。

3 県内いたるところに名水あり
 霧島のシラス台地を通り抜けた霧島裂罅(れっか)水や、日南の榎原(よわら) 湧水、延岡の祝子(ほうり)水系など、焼酎に適した名水が多い。

監修:田代 学さん
1957年宮崎市生まれ。《本書く焼酎》と洒落た『宮崎のしょちゅくれ』を自費出版するほどの焼酎好き。日本認知症ケア学会会員、勤務医。著書『甦れ宮崎城』ほか。

〈 7月27日発売、『焼酎一個人vol.1』より構成〉