“62歳差”が話題を読んだ、加藤一二三九段と藤井四段の対局。加藤氏の得意戦法をよく研究し、攻略した藤井氏。加藤氏は感心すると同時に、口惜しい思いを告白した。もし両者ががっぷり四つで戦っていたら――。

藤井さんは私が不得手とする作戦をぶつけてきました

 

 藤井さんと対局してみて、それはそれは感心しました。私は「棒銀戦法」という作戦を得意としますが、同時に「矢倉」という作戦も得意です。矢倉で名人になりましたし、たくさんタイトルも取っています。だいたい500局ぐらい勝っていますね。負けたのは5回でした。藤井さんとの対局も、この矢倉で挑みました。

 私が先手番、藤井さんが後手番です。私が得意とする矢倉に対して、しっかりと対策を打ってきました。非常に上手い戦い方、もっと言いますと私が不得手とする作戦をぶつけたのですね。

 戦う前に「もしかしたら藤井さんは研究派だから私が苦手とする作戦をぶつけてくる可能性があるかも」と思っていましたが「やっぱり研究してきたか」と。そう思いましたね。

 これは肯定的な面から言いますと、研究熱心で素晴らしい頭脳プレイ。さすが、研究熱心な藤井さんですよ。14歳にして沈着冷静な姿はすばらしい。しかし、若干の批判を、本当に若干の批判を込めますと、“かわされた”なと。

 あらかじめ研究し、私の不利な作戦で挑んだことは頭脳プレイですが、私は正面勝負の戦い方で挑んだわけですから、ちょっとだけ「かわされたな」という気持ちを感じましたね。

 例えば、大相撲でもがっぷり四つで組みますよね。両者が正面から四つ身で組み合う。私は「矢倉の作戦で500局勝った」と言いましたが、がっぷり四つで勝っているのがほとんどなんですよ。もちろん真剣な勝負ですから、そういった戦い方でも何の問題もない。相手が不得手な作戦を取るのは、勝負の世界では当然のことです。

 対局したのは、デビュー戦となる竜王戦の予選でした。繰り返しますが、私がとった「矢倉」作戦は500勝以上もした得意な戦術。しっかりと研究して対策を練ってきたことが、私に勝利した理由の一つではないでしょうか。

明日の第九回の質問は「藤井さんの強さはどこにあるのでしょうか?」です。