日本全国に数多ある名字に高校生の時から興味を持ち、研究を始めた高信幸男さん。自身が全国を行脚し出会ってきた珍名とそれにまつわるエピソードを紹介する。

 8月は、旧歴のお盆の時期であり、日本各地で先祖の供養が行われる。そして、日本の名字の中には宗教に関する名字もたくさんあり、あっと驚くような名字も存在する。

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 宗教的な名字は、ややもすると縁起が悪いように感じられるが、反面、神聖な面も感じられる。宗教的な名字で多いのは、神宮寺(じんぐうじ)や法隆寺(ほうりゅうじ)、薬師寺(やくしじ)等のように寺の名前がそのまま名字になっているものや、寺に関係する本堂(ほんどう)や護摩堂(ごまどう)等の建物、独鈷(どっこ)のように仏具の名字も存在する。
 さらに、仏教用語の仏(ほとけ)や霊(みたま)、墓(はかもり)、仏前(ぶつぜん)、寿命(じゅみょう)、極楽(ごくらく)、念仏(ねんぶつ)、合掌(がっしょう)、般若(はんにゃ)等の名字も存在する。

 宗教に関する名字の多くが、元々宗教に係わる職業をしていた関係から名字になったものと思われる。霊さんは、現在も住職をされており、名字と職業がピッタリの名字である。しかし、霊さんや仏さんが、医療関係等の仕事をするには、苦労も多いのではと考えてしまう。
 実際に霊さんにお話を伺った時、「知人の御見舞いに行く時に大変苦労しました」とおっしゃっていた。なんでも、御見舞用の袋に「霊」と書くと、「まだ生きているのに“霊”は縁起が悪い」と思われるのを心配して、名前を書く時に「霊」の文字がはっきり読めないように、少し崩した文字、つまり草書で書くようにしているそうである。

『一個人』2017年9月号より構成〉