執筆する現役サッカー選手

初の著書、「PITCH LEVEL 例えば攻撃がうまくいかないとき改善する方法」を上梓することが発表された岩政大樹。現役でプレーをしながら執筆をつづける理由とは? 執筆への思いを聞いたインタビューを再掲する。

 一年間で40本。
 現役でプレーするサッカー選手が書き上げた原稿の数だ。
 岩政大樹、35歳。鹿島アントラーズでレギュラーとして活躍し、史上初の3連覇に貢献。日本代表としても、南アフリカワールドカップのメンバーに名を連ねるなど華々しい経歴を持つ。サッカーファンならば知らない人のいないプレイヤーは現在、関東1部リーグの東京ユナイテッドでプレーをし、東京大学サッカー部のコーチの肩書きを併せ持つ。
 なぜ、岩政大樹は書くのか。
 異色のサッカー選手に話を聞いた。

 岩政が「現役目線」と題したコラムをウェブマガジン「BEST T!MES(ベストタイムズ)」で発表し始めたのは昨年の4月。J2ファジアーノ岡山にいた頃だった。月に3本以上のペースで2000~3000文字の原稿を書き上げ、その数は40本(公開21本、未公開19本)、文字数で12万字を超えた。これは書籍一冊に相当する。
「テーマの数だけでいうとまだ2、30個くらいのストックがあります。この連載を始めてからいつもテーマ探しをしていますから(笑)。選手に聞いたり、いろんな人と話をしたり……ただ、(そのテーマについて)書けるかと言われればそれはまた別の話なんですけどね」
 書けそうなテーマを見つけると、忘れないよう携帯電話にメモをする。ふとした瞬間に、そのテーマについての「骨格が浮かぶ」そうだ。
「書けると思ったら、そこからは流れですね。いくつかの段落ごとに“ここをこう持っていく”という骨格が見えたら書き始めるわけですけど、流れでそれが変わってしまうことはよくあります。僕としては、そんな原稿のときのほうがおもしろく書けている感じがあります」

 

 1本の原稿を書き上げるまではおよそ1、2時間。
「最初の頃は、ちょっと書いてみて、うまくまとまらないなあと悩んでは修正して、を繰り返しながら3、4日かけて書いていたんですけど、今では全体の構成をえがきながら書き始めることができているので、だいぶ短くなりましたね」
 ふざけているわけではないが、サッカーをしている人ではなくて、作家をしている人と話しをしているような気分になる。
 連載でもっとも大きな反響があった記事のひとつに『ブーイングに対して選手は何を感じているのか。その是非を問う』と題したコラムがある。これは選手とサポーターという不可分でありながらどこかアンタッチャブルでもあった関係に対して選手目線の感覚を論理的に綴ったもので、大きな議論の的となった。事実、この記事は10万PV(ページビュー)を超えた。