書くことが「議論のきっかけになればいい」

 いずれにせよ、ひとつだけはっきりしていることは、岩政が書く「言葉」に対しては大きな反響がある、ということだ。
 その反響は、一般のサッカーファンだけにとどまらない。あるサッカージャーナリストが苦笑いをして編集部にこう言ったことが忘れられない。
「あれだけのクオリティのものを現役選手に書かれてしまっては、僕たちの仕事がいらなくなる」
 それを告げると岩政は「いやいや、それはないです」と言って笑った。
「でも、いろんな人が読んでくれるのはうれしいです。昔は僕のことを知っている鹿島のファンやファジアーノのファンの方が多かったけれど、最近ではそこに留まらないサッカー指導者や関係者からも観ていますよ、と言われるので。チームメイトや選手からも結構、言われるんですよ。一度、(内田)篤人のことを書いたことがあるんですけど、前もって「ごめんけど書かせてもらったよ」と電話したら「知ってます、見ていますよ」って、どうやら一回目から見てくれていたようで「○○についてはまだ書いてないですよね?」とテーマの提案をしてくれたりもして。岡山にいたときは、若手に強制的に読ませていたこともあります。豊川とかね。次の原稿、出したぞって(笑)」

 実際、多くの人が目にすることが岩政のモチベーションになっている。タイにいた時代、ブログを毎日、更新していた。はじめた当初は「自分のブログなんて読む人がいるのだろうか」と思っていたが、「毎日、楽しみにしている」という声が続く原動力となった。自身が書くことで「議論にきっかけになればいい」と岩政は言う。
「サッカーにまつわる議論のなかのひとつですよね。僕はサッカー選手としてまだまだ成長しなければいけないし、ましてや引退したとしたらもっとサッカーを勉強しなければいけない人間ですから、僕の書いたことに対して違うだろ、と思ってくださっても全然いいんです。実際、反論されて“ああたしかにそうだな”と思うこともいっぱいありますから。サッカーっていろんな指導者がいて、選手がいる。その数だけ考え方も捉え方もあるから難しいように見えるけど、実はシンプルなんです。だからこそ、いろんな人たちといろんな考え方を共有することができて、それがおもしろくて世界に広がっているんだと思う。日本人は気質的に、型にはめたがるとことがあって、サッカーとはこうだという考えに陥りやすいけれど、それを少し取り払って柔軟に捉えられるようになると面白いかなと思っています。僕は選手だから、中からサッカーを見ていて、外から見ている人とちょっと考えや捉え方が違うな、と思うことがある。それは外から見ていて中にいる僕らに対しても同じはずです。僕が書くことが、そういうことを知る、ちょっとしたきっかけになればいいかな」

 話を聞いているうちに、岩政が書いてきた中で「会心の一作」がなんであるか気になった。それを尋ねると、
「ミュージシャンの方たちが、新曲やアルバムを出すときに『毎回ベスト、最高傑作だと思って出している』ってよく言いますよね。僕も毎回、自己ベストを更新しているって思ってるんですけどね(笑)」
 次の自己ベストが待ち遠しい。
(本インタビューは2017年5月15日に掲載されたものを再構成しています。)